金印をめぐる謎。教科書にも出てくる国宝「漢委奴国王印」は捏造だった?:2ページ目
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ただ、甚兵衛が元々実在していなかったのならば、大火事に乗じて記録を抹消したとすることもできるわけです。さらに、「漢委奴国王印」は、同じ蛇紐(だちゅう)の印でも前時代に作られたとされるものに比べて造りが稚拙であり、また漢代の尺に関する資料は漢文さえ理解していれば誰でもアクセスできたことから、これらの資料を元に捏造されたと考えることもできるわけです。
では、なぜわざわざ手間をかけて金印が偽造される必要があったのでしょうか。金印が偽造されたものだとする立場の研究者は、亀井南冥が自身のネームバリューをあげ、甘棠館(かんとうかん)の開校を図ろうとしたことが目的だったとしています。
果たして金印は偽造だったのか、それとも本物だったのか。実際はどうなのか。歴史の闇に埋もれてしまった謎解きです。
2020年8月3日 追記:
一方で考古学の世界でも金印を様々な角度から分析するという作業が2010年からすすめられ、印面に彫られている文字が後漢の初めに特徴的に見られる文字と同じ形態であるということ、そして印のサイズが後漢時代のものと一致するということ、さらに金の純度や金属組成、ツマミの形、紐孔(ひもあな)の底の凹みも、江戸時代には知りえない事実であるということが石川 日出志氏らの研究によって明らかになりました。
追記ここまで
参考
- 三浦 佑之『金印偽造事件』(2006 幻冬舎)
- 河村敬一 『亀井南冥小伝』(2013 花乱社)
- 早舩 正夫『儒学者亀井南冥―ここが偉かった』(2013 花乱社)
- 石川 日出志「金印と弥生時代研究-問題提起にかえて-」『古代学研究所紀要』23号 2015
- 石川 日出志「「漢委奴國王」金印と漢代尺・金属組成の問題」『考古学集刊』第11号 2015 」
- 石川 日出志「「漢委奴國王」金印の考古学」『駒澤大学大学院史学論集』48号 2018
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