実は心眼の使い手だった!?新選組の独眼竜「平山五郎」の生涯【完】:2ページ目
無防備に寝入ってしまった三人、忍び寄る刺客の魔手
(おい、この馬鹿……芹沢先生をお守りするんじゃなかったのか?!)
平素からあまり酒を嗜まなかった重助は、芹沢までもが泥酔(こちらは平常運転)してしまったので、宴会を早々にお開きとして、芹沢&五郎を屯所(八木家)に連れ帰ります。
「お帰りなさいまし……あらまぁ」
暮れ六つ(午後6時ごろ)に屯所へ担ぎ込まれた芹沢&五郎を出迎えたのは、芹沢の愛妾・お梅と、五郎の馴染みである桔梗屋のお栄(えい)、そして重助の馴染み・輪違屋の糸里(いとさと)。
「あぁ重かった……とりあえず、二人を寝所へ運び込もう」
芹沢と平山を奥の十畳間に運んでそれぞれのパートナーに任せ、疲れ切った重助はとりあえず、玄関左手の部屋でお栄と寝ることにしました。
「このままじゃまずいが、二人を見捨てて逃げる訳にも行かないし……見捨てて逃げるにしても、少し休もう……」
善後策を考えている内に、日頃の疲れと慣れない酒によって深く眠り込んでしまった重助。そして夜は更けていき、ガラ空き状態となっていた屯所に、刺客の魔手が迫るのでした。
ついに屯所へ刺客が襲撃、芹沢&五郎の最期
刺客が屯所(八木家)を襲撃したのは、その未明。八木家住人の目撃談によると刺客は4~5名ほどで、メンバーは証言者によって土方、山南、沖田、藤堂、原田左之助(はらだ さのすけ)、御倉伊勢武(みくら いせたけ)のいずれか、あるいは全員かそれ以上(外周を包囲していた?)とも考えられます。
乗り込んだ刺客は、勝手知ったる暗闇の中を一直線に芹沢と平山が寝ている奥の十畳間へ直行。間もなく女の悲鳴が響き渡ると、重助は慌てて跳ね起きました。
「五郎!芹沢先生!」
駆けつける重助に気づいた刺客は、その一部をこちらへ差し向け、重助と数度の斬り合いに及びます。
「おのれ、今はこれまで!」
二人の救出を断念した重助は踵を返すと庭から塀を乗り越えて屯所から脱出、そのまま消息を絶ってしまいました(馴染みの糸里は既に逃走)。
……やがて剣戟の響きもやんで、「もう大丈夫かな?」と出てきて屯所を見て回った八木家住人によれば、奥の十畳間では芹沢鴨とその愛妾・お梅が斬殺されていました。また、同じ室内の倒れた屏風を隔てて五郎の遺体が血の海の中に転がり、その首は胴体と離れていたそうです。
五郎の馴染みであったお栄は、ちょうど小用に立っていて助かったそうですが、一説にはお栄と馴染みだった原田左之助が助けたとも、あるいは最初から(原田の属する試衛館派に通じて)刺客を手引きしていたとも考えられています。