やっぱり浮世絵師・鈴木春信が好き!代表作「風俗四季哥仙」に観る春信の魅力 その1:2ページ目
風俗四季哥仙 立春
このタイトルは“立春”となっています。江戸時代は立春に一番近い新月の日を正月としていたので、この絵は一年の始め、元旦を描いたものでしょう。絵の上部の雲を描いたような部分に、新勅撰集の藤原俊成の和歌が書き込まれています。
天の戸の 明くるけしきも 静かにて 雲居よりこそ 春はたちけれ
(訳)天の戸が開いて、夜が明るくなっていく様子も静かなるままに、なるほど、あの空のかなたから春はやってくるのだな。
そして絵暦には、屋敷の広縁に座る年若い武士が声をかけたのか、襖をあけた若い女性に何やら指差して話しかけている姿が描かれています。
庭に咲く“橘”は寒暖に関わらず常に緑の葉が生い茂ることから「永遠」や「長寿」を意味するおめでたい花でお正月には相応しいでしょう。
しかし筆者には何か物足りない気がします。