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前世の記憶がきっかけで?平安時代のやんごとなき姫君と冴えない衛士の駆け落ちエピソード【一】
皆さんは「前世」を信じますか?初めてのはずなのに、なぜか見たことがあるような風景や、会ったことがあるような人物など……。単なる気のせい、記憶違いなのかも知れませんが、もしかしたら、前の…
前世の記憶がきっかけで?平安時代のやんごとなき姫君と冴えない衛士の駆け落ちエピソード【二】
前回のあらすじ前回の記事はこちら[insert_post id=102871]今は昔、武蔵国から衛士(えじ)として京都に駆り出されてきた一人の男。故郷が恋しいあまり、ぼんや…
今は昔、武蔵国から京の都に駆り出され、朝廷の警護に当たっていたとある衛士(えじ)が、故郷恋しさにその風景を呟いていたところ、天皇陛下の皇女である姫宮さまがそれを聞き留めて「その光景、前世で見たような気がする。一目確かめたいから、武蔵国まで連れてって欲しい」とワガママを言い出します。
根負けした衛士は夜陰に乗じて姫宮さまを背負って御所から抜け出し、一路武蔵国を目指しますが、当然のごとく大騒ぎとなったのでした……。
「姫を連れ戻すのじゃ!」繰り出される追手
さて、可愛い姫宮さまが忽然と姿を消したとあって、天皇陛下はこの世の終わりのごとく嘆かれました。
「おぉ、姫よ……どこへ行ってしまったのか!神隠しに遭ったか、あるいは物怪(もののけ)にでも捕られたか……今ごろ怖い思いでもしているのではなかろうか……!待っておれ、この父が、必ず助けて見せようぞ!」
四方八方を捜索させたところ、有力な情報を入手できました。
「何やら随分ときらびやかに美しく、かぐわしき(良い香りのする)ものを背負った男が、怖ろしい勢いで東へ走り去って行ったそうです」
そう聞いた天皇陛下、膝を打って喜びました。
「それじゃ!姫は日ごろより大層かぐわしき香りを発しておるから、それに間違いない!」
そして御所を警護していた衛士の人員を点呼すると、例の衛士だけいなくなっています。
「おのれ下郎め、姫の美しさに乱心し、我がものにせんと連れ去ったか!えぇい、何をしておる!早く彼奴めを追い駆けて姫を救い、連れ戻すのじゃ……!」