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『べらぼう』蔦重による「エンタメの奇跡」に”煽りのプロ”がつい見せてしまった怒りの爆発【前編】

『べらぼう』蔦重による「エンタメの奇跡」に”煽りのプロ”がつい見せてしまった怒りの爆発【前編】

「蔦重を守れて良かった…俺は世を明るくする男を守るために生まれてきた…」

大河ドラマ「べらぼう」第33話『打壊演太女功徳(うちこわしえんためのくどく)』で、死にゆく小田新之助(井之脇海)が残した言葉。前回の予告編で予感はしていたものの……衝撃的でした。

今回は、新之助の死、タイトル「えんため」にあるように、煽り言葉でエキサイトする打ちこわし騒動を一気に下火にした蔦重(横浜流星)の「エンタメ」の奇跡、初めて“感情”を露わにした一橋治済のエージェント・「丈右衛門だった男」(矢野聖人)の死を振り返ってみました。

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世の中が切羽詰まっている時に、エンターテイメントで人を救うことはできるのでしょうか。天明の打ちこわしを収束しようと、蔦重(横浜流星)が田沼意次(渡辺謙)に進言した「お救い銀」。銀三匁二…

“我が心のままに生きる”男、最後の訴えが

愛する妻ふく(小野花梨)と赤ん坊を、 “貧困に殺された” 新之助の、怒りや悲しみは増幅。その上、頼みの綱のお救い米も出ず、奉行所に抗議に出向くも「役人が米がないなら犬を食えと言った」というデマに煽られて「打ちこわし」を決意してしまいます。

けれども、ともに平賀源内(安田顕)の弟子だった蔦重が、源内の言葉を借りて「新さんは、“我が心のままに生きる”のだから、打ち壊しは止めない、ただしただ暴力に及ぶのではなく、自分の言い分を『のぼり』に書いて米屋の前で訴えるほうが皆に伝わる」という説得したことにより、冷静さを取り戻しました。蔦重の心の中には源内から教わった「書を持って世を耕す」「想いを文字にして伝える」が生きているのがわかる場面でした。

勿視金可視萬民 爲世正我々可打壊
(金を視ることなかれ。全ての民を視よ。世を正さんとして我々打ち壊すべし。)

そう書いたのぼりを手に、米屋の前に長屋の人々と押しかけ、米や金品を盗んだら犯罪になってしまうので、店や家屋を打ち壊し、米俵を捨てるに留めます。ただ、令和の今も“米”に悩まされている側としては、米俵から米が地面にばら撒かれたり川に投げ捨てられたりする場面は「ああ、もったいない」と思ってしまいますよね。

そんな打ちこわしの様子を聞いた、耕書堂のたか(島本須美)の「お百姓さんが泣きますよ。一生懸命作ったお米を…」の言葉には、思わず頷いた人も多かったことでしょう。

2ページ目 蔦重の「エンタメ」が市中に“奇跡”を引き起こした瞬間

 

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