吉原ガイドブックだけじゃない!2025年大河『べらぼう』主人公・蔦屋重三郎が打ち出した”次の一手”
蔦屋重三郎の「次の一手」
2025年1月5日から放送予定のNHK大河ドラマ第64作『べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜』の主人公である蔦屋重三郎(つたや・じゅうざぶろう)。
彼は、江戸の地本問屋として出版界を牽引した人物です。今回は、その重三郎が経営基盤を固めて事業を拡大させていった流れを解説しましょう。
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鱗林屋孫兵衛という存在[caption id="attachment_233731" align="aligncenter" width="350"] 版元として出版物に登場した蔦屋重三郎の肖像画…
重三郎が出版した「蔦屋版」の『吉原細見』(吉原のガイドブック)は、それまで業界を牛耳っていた「鱗形屋版」を圧倒していきました。
それにとどまらず、重三郎はさまざまなジャンルの本の出版に乗り出すことでも事業を拡大させていきます。彼には「次の一手」があったのです。
定期刊行物だった『吉原細見』と同じく、安定的な売り上げが見込めた本としては富本節の正本(音曲の詞章を記した本)・稽古本と往来物の出版が挙げられます。
この、富本節とはなんでしょうか。
浄瑠璃の流行をキャッチする
三味線伴奏による語り物である浄瑠璃の世界では、この安永期に富本豊前太夫(2代目)という美声の人気太夫が登場したため、富本節の人気が大いに高まりました。
このため富本節を修得したいと考える人が増えて、富本節の正本や稽古本の需要が高まることになります。
世間の流行に敏感な重三郎はこれを見逃しませんでした。富本節の正本・稽古本の出版を手がけ、経営基盤の柱の一つとしたのです。
往来物とは手習いに使われた教科書のことで、庶民教育には不可欠な教本でした。
価格も安く設定されており、一冊あたりの利益は薄かったものの、長期にわたって摺りを重ねられるため安定した売り上げが見込める売れ筋商品だったのです。
安永9年(1780)から、重三郎は毎年のように往来物を出版し、富本節の正本・稽古本と同じく経営基盤の柱としていきます。
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