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美しすぎた男装のイケメン女剣士・中沢琴の幕末奮闘記【上・浪士組編】

美しすぎた男装のイケメン女剣士・中沢琴の幕末奮闘記【上・浪士組編】:4ページ目

常識的に考えれば、京の都で物乞いか強盗にでも成り下がるのがオチです(実際、そのような末路を辿った者もいたでしょう)。

しかし、琴も強がって聞き入れません。

「……尽忠報国の志あらば、それしきのこと!兄上が帰りたければ帰ればよい、私は一人でも参ります!」

「そうは行かん。兄一人おめおめと帰っては、父上と母上に申し訳が立たない。ここはどうあっても、一緒に江戸へ帰るのだ」

「嫌です!」

「そもそもだ。此度の江戸帰還とて、ただ帰るのではなく、上様の御為に務めを果たすべき地が、京の都から江戸へ変わっただけのこと。真に尽忠報国の志あらば、どこであろうと己が最善を尽くすのが、武士のあるべき姿、とるべき道であろう。違うか?」

そう言われてしまうと、琴は返す言葉もありません。

「……はい」

かくして兄に説得された琴は仕方なく江戸へ帰るのですが、もしも琴が壬生浪士組に入っていたら、近藤や芹沢たちと、また別の歴史を刻んでいたのかも知れません。

しかし、江戸に帰ったら帰ったで、琴にはまた新たな人生の転機が訪れるのでした。

【中編に続く】

※参考文献:
岸大洞ほか『群馬人国記 : 利根・沼田・吾妻の巻』歴史図書社、昭和五十四1979年4月
石村澄江『上州を彩った女たち』群馬出版センター、平成二十六2014年11月
石川林『事件で綴る幕末明治維新史 上巻』朝日新聞名古屋本社編集制作センター、平成十1998年6月
斎藤正一 著/日本歴史学会 編『庄内藩』吉川弘文館、平成七1995年1月

 
 

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