ゲゲゲの鬼太郎の原型! 幻の紙芝居「ハカバキタロー」と紙芝居作家たち【2】:2ページ目
衝撃の怪奇紙芝居!「ハカバキタロー」のストーリー
昭和8年に封切られた(紙芝居は最初の公開をこう言いました)『ハカバキタロー』という紙芝居のあらすじは、こんなものでした。先に断っておきますが、なかなかエグい話です。
とある農村で、姑の嫁いびりの果てに死んだ女が妊娠したまま土葬される。その墓の中で母の死骸から赤ん坊が生まれ、母の屍肉を食べて少年の姿まで成長した後、土から這い出していく。そして母の仇である姑を殺して井戸に落とす。やがて姑の死体が上がり大騒ぎになるが、それは復讐劇の始まりに過ぎなかった……。
……子供向けにしてはダーク過ぎますね。しかし戦前の紙芝居は、こういう復讐ものは珍しくありませんでした。『猫娘』『蛇娘』といった怪奇ものも一つのジャンルとして確立しています。ただし『ハカバキタロー』は人気が出てシリーズ化されると、ヒーローものの要素も出てきて怪奇大活劇へと変化していきました。
すでにピンと来ている人もいると思いますが、『ハカバキタロー』は、『飴屋の幽霊』または『子育て幽霊』などと呼ばれる民話を下敷きにしています。妊娠中に死んだ母が、死後生まれた赤ん坊を幽霊になり育てる、怖ろしくも哀しい怪談です。類話は各地にありますが、京都・六道の辻の物語が名物「幽霊子育飴」とともに有名です。
この物語をモチーフに、伊藤正美は『ハカバキタロー』のストーリーを作り出しました。「墓場」が象徴的なアイテムとして登場するのは『ゲゲゲの鬼太郎』まで引き継がれていますね。