美しき女武者!木曾義仲と共に戦いその最期を語り継いだ女武者・巴御前の生涯(下):3ページ目
義仲との別離「最後のいくさしてみせ奉らん」
さて、這々(ほうほう)の体で京から逃れた義仲たちは、江州粟津(現:滋賀県大津市辺り)まで落ちのびますが、ここに数千騎の追手が迫ります。
対する義仲方はもう十騎もいない状態、もはや覚悟を決めて、巴に言います。
「最期まで女を連れていたとあっては東国武者の恥なれば、汝は独り落ち延びよ(要約)」
しかし、巴もたいがい強情で「最期までお供させて下さい」と言い張るものの、結局は義仲の願いを聞き入れます。
「最後のいくさしてみせ奉らん(最後の武勇をお見せします)」
※『平家物語』より。
そう言うなり追手の方へと馬を馳せ、豪傑として知られた敵将・恩田八郎師重(おんだの はちろうもろしげ)と一騎討ちに臨み、師重を馬から引きずり落とすなり首級を叩き落としました。
そして巴は唖然とする敵勢を前に鎧や兜を脱ぎ捨て、東の方角へと走り去っていったそうです。
これまで義仲を守ることこそ戦う理由であった巴にとって、義仲の元を去る以上、戦う理由はなくなります。
戦いの象徴である鎧や兜を脱ぎ捨てたことは、巴の引退表明だったのでしょう。
この一騎討ちを最後に、巴が武勇を奮うことはなくなりました。
巴が去った後、義仲は間もなく討ち取られました。享年31歳。