猿、狼、ニワトリまで?「遠野物語」にも登場する奥州で恐れられた妖怪「経立(ふったち)」とは?:2ページ目
色々な経立たち
さて、色んな生き物の化けた経立ですが、どんな生き物がどんなエピソードを残しているのか、その一部を紹介したいと思います。
経立の中で最も多い?のが、かの『遠野物語』にもよく登場する猿の経立。
その姿は人間によく似ていて、しばしば村の女性をさらう助兵衛さや、漆に砂を混ぜて自分の毛皮を塗り固める知恵を持っており、銃で撃っても弾丸が貫通しなかったそうです。
他に『遠野物語』には狼の経立も登場しますが、こちらは記述を読む限り、経立と呼ばれながらも四足歩行のままで、普通の狼とあまり変わりがないようです。
作中では三寸(約9~10センチ)の草むらに身を隠せたり、季節によって草むらの色調に合わせて毛色を変えられたりする能力の紹介や、家畜を食い殺したり、人間と取っ組み合いの死闘を演じたりなどのエピソードも伝えられます。
『遠野物語』以外にも、岩手県の下閉伊郡安家村(現:岩泉町)には、自分の卵(子供)が人間に食べられることを恨み、人間の子供たちを次々に殺した雌鶏の経立や、突如現れたイケメンが実はタラ(鱈)の経立だった、などの説話が残されています。