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【小説】国芳になる日まで 〜吉原花魁と歌川国芳の恋〜第13話

【小説】国芳になる日まで 〜吉原花魁と歌川国芳の恋〜第13話

国芳に解かれた帯を直しもせずにしばらく茫然と佇んでいたみつの元へ、酔った佐吉と近江屋が様子を窺いに入ってきた。

「そろそろ描けたかア?」

「って、兄さんが居ねえ!」

慌てる佐吉に、

「・・・・・・帰りんした」

みつが、ぽつりと答えた。

恐らく引き留められるのを恐れて二人に声を掛けずに辞去したのだろう。

「嘘だろう」

近江屋は開いた口が塞がらない様子であった。

「花魁、近江屋さん、ほんにすいやせん。兄さんは仕事は疎かにしねえ人です。それだけは本当だ。絵は必ず完成させて、後の月にゃア花魁にも見せられるよう準備して来やすから・・・・・・!」

佐吉は真っ青になって平謝りしたが、みつは微笑して頷いただけだった。

その目に浮かんだ涙とちょうど同じような綺麗な月が、窓の外の空に浮かんでいた。

画像 歌川広重「月に兎」ボストン美術館蔵

 

 

 

 

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