- No.34「いけしゃあしゃあ」の語源は何?調べた結果をいけしゃあしゃあと紹介します
- No.33最終話【小説】国芳になる日まで 〜吉原花魁と歌川国芳の恋〜第33話
- No.32【小説】国芳になる日まで 〜吉原花魁と歌川国芳の恋〜第32話
【小説】国芳になる日まで 〜吉原花魁と歌川国芳の恋〜第12話:2ページ目
2ページ目: 1 2
画像 広重「吉原仲之町夜桜 」ボストン美術館蔵
思っていたものと違う返答に、思わずみつの肩の力が抜けた。そしてそう答えた佐吉の目が余りにもまっすぐで、みつは断る事ができなくなった。
「そうまでおっせえすなら引き受けんしょう。いつ描かさんすか」
「なんだ梅屋さん。何も言ってねえのかい」
隣に座る近江屋が屈託なく笑った。梅屋とは佐吉の狂歌師としての名である。
「もちろん中秋の名月の今日描くしかありやせんよ、花魁」
近江屋はそんな事を平然と言う。
「そねえな事を言いんしても、一体どこで・・・・・・」
その時、国芳がようやく口を開いた。
「部屋に連子窓のある、京町二丁目裏通りの桐屋。・・・・・・」
みつははっとして国芳の方を向いた。
みつと国芳が逢瀬に使っていた裏茶屋ではないか。
「ああ、京町二丁目の。なかなか風流な裏茶屋じゃねえかい」
佐吉がすかさず口を挟んだ。
さすがの色男、伊達に遊んでいない様子である。
画像 吉原遊廓の裏茶屋 出典元・「郭の花笠」国立国会図書館蔵
「そんなとこオよく知ってたな、芳さん。いつ、そんな所に行ったんでい」
「二度ほど。・・・・・・惚れた女と」
国芳は濁さずに口にした。
みつは国芳がどんな顔をしてその言葉を言ったのか、その表情(かお)を見る事が出来なかった。
はにかんで頬を染めているのか、まっすぐ前を向いて強い目をしているのか。
想像もつかないまま、ひたすらにうつむいている。
ただ国芳が同じ部屋に居るというそれだけで、みつの胸奥の鼓動は擦り半鐘のように激しく鳴り渡っていた。
作中イラスト:筆者
ページ: 1 2
バックナンバー
- No.34「いけしゃあしゃあ」の語源は何?調べた結果をいけしゃあしゃあと紹介します
- No.33最終話【小説】国芳になる日まで 〜吉原花魁と歌川国芳の恋〜第33話
- No.32【小説】国芳になる日まで 〜吉原花魁と歌川国芳の恋〜第32話
- No.31【小説】国芳になる日まで 〜吉原花魁と歌川国芳の恋〜第31話
- No.30【小説】国芳になる日まで 〜吉原花魁と歌川国芳の恋〜第30話