[お江戸小説] ココロサク【6話】ピンチはチャンス!?:2ページ目
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「ねえちゃん。きれいだねぇ。一回いくらだい?」
まだ昼前だというのに酒臭い客たちだ。こういう人は、水茶屋の茶汲み女を矢場の矢取り女と同じと勘違いしているとしか思えない。あ、矢場の矢取り女っていうのは、盛り場や寺社の境内の揚弓場で、客の矢が当たる黄色い声で「あたりー!」って叫ぶ女のことね。矢取り女の本業は、色を売ること。最近、彼女たちの人気が高まっているからか、茶汲み女の私にも同じことをしろってお門違いも甚だしいってもんだよ、まったく。
こんな奴らに構っているヒマはないと強気で無視していると、急に腕を掴まれた。
「おい、ねえちゃん。聞いてんのか?ちょっとくらいもてなししろよ」
「ちゃんと仕事しないとねぇ。店の旦那に叱られちゃうよ」
「でも、この店の旦那、店の奥にいるみたいだぜ。俺たちに気を遣ってくれてるんじゃないか?」
「じゃ、遠慮なく」
開店したばかりで、まだ他の客が誰一人いないのをいいことに、一人が後ろから私を身動きできないように押さえ、もう一人は私の口を押さえてくるものだから、必死で抵抗してもどうにもならない。下品な笑みを浮かべながら、最後の一人が着物の上から私の身体を触ってくる。
「へぇ、ねえちゃん。着痩せする方なんだな。結構、乳でかいじゃねえか。こりゃ、たまんねえな」
そういいながら、はだけてきた着物の衿もとから薄汚れた手を入れて、身体をまさぐってくる。
(やめて、誰か助けて!)
そのときだ、今一番会いたい人が視界に入ってきたのは。
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