[お江戸小説] ココロサク 【4話】おりんの秘めた想い:2ページ目
ふぅ、甘いもん食べて休憩したくなる。そんな私の想いが通じたのか、おすみさんからうれしいお誘い。
「おりんちゃん、羊羹一緒にどうだい?」
「わ!食べる食べる!」
料理屋番付を見ながら、どの料理茶屋に行きたいだの、たわいもないおしゃべりで女2人で盛り上がっていたら……。
おっと、福助の登場。
「みてみて~!富くじ(※1)買ったら、大当たり~!笠森お仙(※2)の美人画(※3)買っちゃった~!色っぺぇ。こんな美人に、夜のお相手してもらいてぇなあ。おいらもひげを全部抜いて、肌ツルツルにしようかなぁ。」
「福助、色道大鏡(※4)の読みすぎなんじゃないの?江戸の三男(※5)はね、渋くて爽やか、キリッと粋でいなせなんだってよ。」
ちょっと茶化したくなるのも、愛嬌がある福助ならでは。
「渋くて爽やか、か。なんだか、新八さんみてぇだな。」
そういわれてみると、まさにそうかも。
ふと新八さんのことを思ったそのとき、威勢よく戸が開けられたのはおみつと五右衛門の家。顔を出した五右衛門はなんだかいつもと違う様子で、不安そうな表情。どうしたんだろう?
※1 富くじ……富突(とみつき)とも呼ばれた宝くじ。
※2 笠森のお仙……水茶屋の娘で、華奢で守ってあげたくなるような雰囲気だったそう。鈴木春信が描いたところ、大人気になった。
※3 美人画……鈴木春信や喜多川歌麿が描く新吉原の美人画で、江戸っ子が夢中になったブロマイドのようなもの。
※4 色道大鏡(しきどうおおかがみ)……男性が遊郭でモテるための身だしなみの指南書。
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