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絵師、彫師、摺師…職人たちのコラボアート!江戸時代の浮世絵の製作過程を工程順に紹介

絵師、彫師、摺師…職人たちのコラボアート!江戸時代の浮世絵の製作過程を工程順に紹介

摺り師:板合わせ

さて、ついに摺り師の出番です。馬連(ばれん)という紙をこする道具を使って全ての色を1枚の紙に試し摺りします。見当がずれていないか、色抜けや彫り忘れはないかなどのチェックはここで行います。

ちなみに和紙はそのまま摺ると墨や水を吸いすぎて滲むので、摺る前に礬水(どうさ)というニカワとミョウバンを混ぜた液を薄く均等に引いて滲み止めの加工しました。絵具が滲まずに紙に定着するかどうかは、摺りの技術だけでなく、礬水引きの腕にもかかっていました。

こちらは、歌川国貞が描いた礬水引きする摺り師。手桶に入った液体を大きな刷毛で和紙に塗っています。

絵師、彫り師、摺り師:見本摺り

版元や絵師、彫り師の立ち会いのもと、色を微調整したり見当を直したりして摺りあがりを完成形に近づけていきます。版元と絵師がOKを出せば、見本摺りのできあがりです。

摺り師、版元:本摺り

摺り師は見本摺りをもとに、本摺りと呼ばれる実際に販売する商品を摺ります。

腕の良い摺り師が朝から晩まで摺ると、目安として約200枚が摺りあがりました。その200枚を「一杯」と呼び、「初摺(しょずり)」(=初版)として絵草紙屋や地本問屋の表に並べられて販売されました。

この初摺、よほどの人気絵師でない限りは50枚ほどでした。版元は売れ行きを様子見してから増刷したようです。

新作発売日の朝、ファンは何が何でも初摺をゲットするため地本問屋に押しかけました。その理由は簡単。初摺は丁寧で、後摺は雑だからです。後摺になってくると版木が摩耗してだんだんと線が潰れてきますし、慌てて増刷するために、こだわって絵師と調整した色彩もアバウトになって暗くなったり、グラデーションをサボってベタ摺りになったり、しまいには絵具が足りなくなったとかで最初の絵師の色指定と全然違う色で摺ったりしていました。絵師のファンはその絵師がちゃんと立ち会って監修したものが欲しいので、初摺りを買い求めたのです。

記事内絵・加工:筆者
【画像出典】

 

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