絵師、彫師、摺師…職人たちのコラボアート!江戸時代の浮世絵の製作過程を工程順に紹介:2ページ目
版元:検閲を受け、改印をもらう
出来上がった版下絵は、版元から地本問屋仲間や名主に提出され、内容を検閲されます。幕府を揶揄する内容や、当時の世相をあからさまに批判するような内容の絵はこの時点でアウト。逆に合格なら「極」という字を模した改印を押してもらえました。
この検閲の目をかいくぐるのが上手かったのが歌川国芳です。彼の浮世絵のいくつかは出版後に「ぱっと見は分からないが、よく見ると世相を揶揄しているのではないか」と巷で話題沸騰して出版禁止になり、その度に罰金を払ったりしていました。
こちらは、出版後に発禁となった国芳の「浮世又兵衛名画奇特」。左右の端にある「一勇斎」の黄色の長方形の上の部分に、改印もしっかり押印済みです。
彫り師:主版を彫る
検閲を合格した版下絵は彫り師のところに届けられ、彫り師が黒い墨で摺る主線を彫って主版を作ります。ほとんどの場合は版元専属の彫り師に彫らせましたが、難しい作品だと他の版元のベテラン彫り師の手を借りる事もありました。
版下絵に使われるのが薄美濃紙でなければならなかった理由はここにあります。彫り師は、絵師が描いた版下絵をそのまま裏返して版木に貼り付け、裏から透けて見える線画をもとに彫りました。つまり、版下絵は削られてしまい、彫り上がりには紙は残りません。たとえそれが北斎の直筆画であっても、容赦なく削るしかないのです。まれに現代に残っている版下絵は超レアな存在なので、お目にかかった際は要チェックです。
彫り師:校合摺り
主版が彫り上がると、墨1色で摺った校合摺りを10枚ほど絵師に渡します。彫り師が摺るので綺麗に摺られているわけではなく、けっこうアバウトだったようです。