古事記や日本書紀では物足りない?そんな人に贈る日本神話が記された古典ベスト3:2ページ目
2.神仏習合の先駆け?『日本霊異記』
『日本霊異記(りょういき)』は、平安期に景戒(きょうかい)と言う薬師寺の僧侶が『日本国現報善悪霊異記』と言うタイトルでまとめた仏教説話集です。「仏教なのに日本神話?」と思う方もいるかも知れませんが、この説話集には神話的な要素が多く含まれています。
『日本霊異記』に掲載された説話には、記紀神話に登場するヒーローである雄略天皇と家臣・スガル(栖軽)が雷様を相手に奮闘する話、狐や蛇など人外の存在と人間の通婚、仏教の地獄を“黄泉”と表記するなど、神話の面影を色濃く残した場面が幾つも出てきます。
後に日本では、八百万の神は仏様が化身した姿だったとする『本地垂迹(ほんじすいじゃく)』を始めとして仏教と神道を混交する、悪く言えばごちゃ混ぜにしてしまう文化(現代でもあまり変化がありません)が生まれます。そうした我が国独自の文化が花開き始めた平安時代に、日本神話の影響を色濃く受けた『日本霊異記』が誕生したのは、ある意味で時代を先取りしていたのかも知れませんね。