秋は月の美しく見える季節。先日は十五夜にぴったりな浮世絵、月岡芳年の作品をご紹介しました。
十五夜にぴったり!幕末の浮世絵師・月岡芳年の名作「月百姿」全100作品を一挙紹介
江戸時代後期〜明治時代にかけて活躍した浮世絵師・月岡芳年(つきおかよしとし)。歌川国芳に師事していた絵師で、同時期に活躍した絵師には河鍋暁斎がいます。河鍋暁斎も小さい頃から国芳に師事していますので、芳…
月岡芳年の他にも多くの絵師が作品の中にさまざまな月の姿を描いています。今回は、この季節にぴったりの日本画・浮世絵の名作を集めました。今宵の月を眺めるときに、併せて楽しんでみてはいかがでしょうか。
歌川国芳「個性的なかたちを持つ月の光」
まずはこの人、歌川国芳。武者絵だけじゃないんです。月を描いても個性が光ります。なんと国芳の月は、「光」にかたちがあるのです。
連子窓から室内に差し込み、放射状に広がる光と影。かたちある月の光が芸者の姿を美しく照らし出します。
ちょこんとした月のまわりにまあるく広がる優しい光が、吉原遊郭に続く夜道をほのぼのと照らします。画面中央の男は吉原帰りでしあわせの余韻の中にいるのか、はたまた遊女にフラれて面白くないのか、縞の着物の着崩れもそのままに、頰被りの下で大あくび。
歌川広重「ほっこり可愛い動物と月」
江戸時代の評論でも「風景といえば広重」と評された歌川広重。広重はたいへん多くの月を描きましたが、月のお供に可愛らしい鳥や動物を添えることも多くありました。
こちらは団扇に貼るために描かれた団扇絵。輪郭線を省いて描かれたうさぎの真っ赤な目が、恋しそうに月を見つめています。月の大きさが、うさぎの小ささや可愛らしさをいっそう強調しています。
おやおや、なんとも可愛らしいみみずく。温かい月が空に昇った秋の夜、色づく紅葉の枝にとまり、羽に顔を埋め、一羽のみみずくがまどろんでいます。ぬくぬくとした温度まで伝わるような作品です。
この「月と雁」は1949年に切手の図柄にも選ばれた有名な作品。左上の句は、「こむな夜か 又も有うか 月と雁」ーこんな夜が またと来るだろうか、いや、来るまいー。広重のため息が聞こえるようです。それほどに美しい、忘れえぬ夜だったのでしょう。