朝ドラ「風、薫る」実はりんのモデルを看護の道へ導いた牧師…吉江善作(原田泰造)のモデル・植村正久の生涯:3ページ目
神学と教育に力を注ぐ
正久は、牧師としてだけでなく、神学者、教育者、評論家としても活動していきます。
明治17(1884)年には『真理一斑』を刊行。同書は「日本人による最初のキリスト教神学書といいうる」と言われました。
明治37(1904)年には、東京神学社を創設。これは現在の東京神学大学につながる神学校の一つです。
正久が目指したのは、外国人宣教師に頼りきる教会ではありません。
日本人の牧師を育て、日本人自身の言葉で信仰を語り、日本の社会に根ざした教会をつくることでした。
これは、明治日本におけるキリスト教の自立を目指す歩みでもありました。
明治13(1880)年に小崎弘道らと『六合雑誌』を創刊。明治23(1890)年には独力で『福音新報』を創刊しています。
正久は『日本評論』や『福音週報』などを通して、キリスト教界だけでなく、政治、社会、教育、文学についても発言しています。
当時の日本において、宗教者が社会や文学について語ることは、大きな意味を持ちました。
正久の言葉は、教会の中だけに閉じたものではありません。近代日本がどのような精神を持つべきかを問う言葉でもありました。
しかし、正久の人生は穏やかな信仰生活だけではありませんでした。
明治34(1901)年からは、海老名弾正とのキリスト論論争が勃発するなど波乱も見せています。
大正14(1925)年1月8日、正久は世を去りました。享年66。
幕臣の子として生まれ、宗教者として生き、新しい時代の扉を開くために奔走した生涯でした。
大関和のように、信仰を通じて新しい職業へ踏み出した女性たちの背後にも、正久の言葉と導きがあります。
武士の時代から近代日本へと向かう激流の中で、信仰と言葉によって人々を導こうとした歩みでもありした。
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