「べらぼう」“覚醒の上様”を巻き込む蔦重最大の大戯け!そしてオタク全開の定信との別れを考察【前編】:2ページ目
蔦重のDNAを受け継いだ「みの吉」のアイデア
治済が祭りの騒ぎに乗じ定信の家臣らを毒殺、裏切った大崎(映美くらら)も毒殺、耕書堂の手代たちも毒殺しかけたため、店は休業、皆に閉じこもるように命じた蔦重。
“正体不明の悪党”を恐れた手代たちは、店を辞めたいと次々言い出します。そんな店のピンチを救ったのはみの吉(中川 翼)でした。
自身も毒に苦しみながら、床の中から「うっかり毒饅頭、くわねぇですかね、そいつ……仕掛けたやつがぽっくりっておもしろくねぇですか?」と、呟きます。
毒饅頭の仇は毒饅頭で討つ。苦しみながらも、「そう来たか!」なアイデアを捻り出す“本屋魂”を持つみの吉に感心する場面でした。
“どんなときでも面白いことを考える” “大変なときこそ全力でふざけ倒す”、そんな蔦重のDNAを、みの吉がそのまま受け継いでいるじゃありませんか!みの吉、ありがとう、早く元気になりますように。
能好きの傀儡師が能役者によって闇に葬られる
毒饅頭事件で治済らに嫌味をいわれ辱められる定信。額をペシペシと扇子で打ちすえ侮辱される場面は、吉良上野介と浅野内匠頭のようでした。(井上裕貴さん、浅野内匠頭も絶対にハマリ役だと)
「もはやこれまで、殿中で治済を斬る!」と息巻く定信。四十七士が討ち入りした12月14日の前週にこのシーンを差し込むとは……。
怒り心頭に達している定信のところに現れたのが蔦重でした。「本屋の相手をする暇はないのだが」と怒りをぶつける定信。
「まぁそうおっしゃらずに。なにせ暇なもんで。どなた様かのおかげで店を休むことになりまして」と、うっすら笑みを浮かべたまま、ものすごい嫌味をぶつけます。蔦重らしいですね。
以前、地本問屋・西村屋(西村まさ彦)に、にこやかに「汚ねぇやり方もありだって教えてくれたのは、西村屋さんなんで」……と、言い返した時のことを思い出しました。
蔦重に嫌味を言わせたら天下一品!あの時よりも年齢を経た分、老獪さが加わり、嫌味も冴え渡っていて思わず笑ってしまいました。
カチン!と来た定信にかぶせるように、「思いついたんでございますが、傀儡好きに毒饅頭を食わせるっていうのはどうでしょう」とたたみかけるように提案します。浄瑠璃小屋作戦が失敗し、そのあとノープランだったことを蔦重に責められて以来、蔦重のほうがリードするようになっているのが面白いですね。
饅頭を食べるパフォーマンスをする蔦重に「ふざけるのもいい加減にしろ!」と怒る定信。
「そうおっしゃられても、ふざけるのが私の分にございまして。きっちり分を務めていればよい世がくるのではございませんでしたっけ?」
とキレキレの嫌味の中にも、“仇討ちを成功させるため定信を戒めている”を感じる言葉でした。

