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【べらぼう】写楽は歌麿と蔦重の子供!?“業と情”そして因果の絡み合った写楽の絵とは?

【べらぼう】写楽は歌麿と蔦重の子供!?“業と情”そして因果の絡み合った写楽の絵とは?

大河ドラマ「べらぼう」第45回放送「その名は写楽」では、蔦重(横浜流星)が巨悪をあぶり出す「仇討ち」に加盟せざるを得なくなりました。

計画を聞いた以上、拒否すれば生かして帰さぬ……松平定信(井上祐貴)のなりふり構わぬ野暮なお誘いに、蔦重も嘆息するしかありません。

「仇討ち」と言えば曽我兄弟。その演目の成功を祝う曽我祭に合わせて出版する「源内風の役者絵」を模索し、チーム蔦重は七転八倒。あぁでもないこぅでもないとこだわり続ける蔦重に、永年の盟友である北尾重政(橋本淳)さえもキレ出す始末です。

蔦重の想いを描けるのは、やはり歌麿(染谷将太)しかいない。そんな確信に至りました。が、蔦重と歌麿は決別(2度目)したばかり。そう簡単に戻って来てくれるでしょうか……。

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大河ドラマ「べらぼう」もいよいよ大詰め。第46回放送「曽我祭の変」では、曽我祭に合わせて、蔦重(横浜流星)が東洲斎写楽の役者絵をここぞとばかり売り出します。[insert_post id=26…

「見たい」ていの欲望に動かされた歌麿

歌麿の元へやって来たのはおていさん(橋本愛)。歌麿は「蔦屋の女将さん」とそっけない様子です。

そりゃ無理もありません。歌麿が蔦重との決別に至ったのは、彼女の妊娠がキッカケだったのですから。

今あの人(蔦重)は最もあなたを必要としている……そりゃそうでしょう。あの蔦重のくどさにつき合い切れるのは、誰よりも絵にくどい……もといこだわりの強い歌麿をおいて存在しませんから。

みんな売れりゃいいんです。絵師はともかく、本屋なんて連中は「歌麿」の名前さえ入っていれば、絵の中身やまして技法なんてどうでもいい。

そしてそれは、お宅のご主人(蔦重)も同じじゃないのかい?かつて自分に「弟子の描いた絵にちょっと手直しすりゃ、立派な歌麿作だ」なんて言ってたでしょう。

しかしそれが蔦重の本意でないことは、おていさんが持参した「歌撰恋之部」が証明しています。以前蔦重に「恋心」と称して手渡した下絵が、すべて完成したのでした。

「これは蔦屋重三郎の恋文、正しくは恋文に対する返書にございます」

毛割や着物の柄や色味にまでこだわり抜いて、摺師と何度も大喧嘩したこと。板元印と署名の位置関係には最後まで悩み抜いたこと……たとえ歌麿が望む形(恋心)ではなかったにせよ、蔦重が歌麿を想い続けてきたのは間違いありません。

確かにそれはそれで尊いけれど、それに振り回され続けるのはもうたくさんだ……うんざりする歌麿に、おていさんは畳みかけるように宣言しました。

「私は、出家いたします!」

歌麿の本心は百も承知。自分の存在がそれを妨げていることも重々承知。身を引く訳ではないが、これまで喪われてきた命の菩提を弔いながら、蔦重と寄り添って生きて行きたい。

だから代わりに、寄り添う者が必要だ……そんなおていさんの言葉を、歌麿はあっさり「嘘だね」とお見通し。

「見抜かれてしまいましたか」最後の切り札も通じないとなれば、おていさんも本音を切り出すよりありません。

「見たい」

本屋の端くれとして有態に言えば「二人の男の業と情、因果の果てに生み出される絵」というものを、ぜひ一度見てみたい。

それを成し遂げられるのは、蔦重と歌麿を措いてないと確信したからこそ、おていさんは心底の欲望をむき出したのでしょう。

これまで一貫して「蔦重のために」行動してきたおていさんが、一切の建前をかなぐり捨てて本音の欲望を突きつけたからこそ、歌麿は初めて揺り動かされたのです。

真面目一筋に生きてきた彼女もまた、たい・たい・たいの欲望渦巻く時代に生まれた一人であることを、実感せずにはいられない一幕でした。

2ページ目 写楽は歌麿と蔦重の子供?

 

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