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『べらぼう』実は写楽は外国人!?謎の浮世絵師・東洲斎写楽はオランダ人「シャラック」だった説

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版元は蔦重だけ!新人なのに豪華なデビュー作の謎

写楽は、寛政6年(1794)5月に突然、彗星の如く登場します。蔦屋重三郎の元で、歌舞伎役者の上半身を描いた「大首絵」を一挙に28図も出版しました。

歌麿の繊細で儚げな美人の大首絵とは違い、写楽の役者大首絵は、迫力がありかなり特徴的です。しかも、人物の背景に「黒雲母」(墨に雲母(きら)と膠(にかわ)を混ぜた光沢のある絵の具)を用いて、人物を際立たせるという贅沢な仕上げでした。

蔦重は、従来にはない写楽の画風を見たときに、「これは売れるぞ!」とかなり期待して制作に力を入れたのでしょうか。

似過ぎてモデルの役者からはブーイングの嵐!?

本来役者絵とは人気の歌舞伎役者のブロマイドのようなもの。当時、人々は芝居を楽しんだ後に、家でも余韻に浸るためにこぞって贔屓の役者絵を購入したそうです。

ファンとしては、当然“推し”のきれいな姿を眺めてため息をつきたいので、その役者のチャームポイントを際立たせ「美化」した画が欲しいものです。

ところが写楽の絵は、従来の美男美女画ではなく役者の顔の特徴を強調し、美醜関係なくリアリティを追求する画風でした。確かに面白い画風なのですが、ファンにとっては愛でたい絵ではなかったでしょう。

特に女形の役者絵は、「化粧と華やかな着物の下に隠されているのは男性だ!」というリアルが浮き彫りになっています。女形の美しさや可憐さより「男性が演じているぞ」という、ファンが見たくない現実を浮き彫りにしてしまったのです。役者からも「自分はこんな顔していない!」「もっときれいに描いてくれ!」というブーイングの嵐を受けたとか。

ここで、『三世市川高麗蔵の志賀大七』を描いた、写楽と勝川春英の絵の違いを見てみましょう。

上は写楽が描いたものです。面長で鉤鼻、やや前に突き出た顎が特徴の役者のようですが、鼻はけわしく顎はがっちりと長い部分を強調し、目も丸くして瞳を中心に寄せユーモラスな表情に。そして、下は勝川春英が描いたものですが、すっきりとした容貌に描かれています。

当初、役者本人やファンには不評だった写楽の画ですが、その秀でた描写力や個性がのちの才能への評価にとつながっていくのは皮肉なものです。

3ページ目 画風は変化し、あってはならないミスも連発

 

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