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“真の被害者”とは?誤解だらけな「ノルマントン号事件」日本とイギリスの間で翻弄された悲劇の船長【後編】

“真の被害者”とは?誤解だらけな「ノルマントン号事件」日本とイギリスの間で翻弄された悲劇の船長【後編】

無理筋の実刑判決

【前編】では、あのノルマントン号事件で、船に日本人が乗っていた理由や死者が出た経緯などを説明しました。

あの漫画と「ノルマントン号事件」は無関係!実は日本とイギリスの間で翻弄されていた悲劇の船長【前編】

ノルマントン号事件とは明治時代の日本が積極的に欧化政策と外交交渉を進めているなか、そこに冷や水を浴びせるような形で起きたのがノルマントン号事件です。この事件は、教科書では以下のような内容で…

本稿では、さらにこの事件にまつわるいくつかの「知られざる真相」を説明します。

また裁判の経緯ですが、ノルマントン号事件で最初に行われたのは刑事裁判ではなく、海難審判でした。

刑事裁判は個人の刑事責任を問い、刑罰を科すことを目的としますが、海難審判は海難事故の再発防止を目的とし、海技免許等を持つ人への懲戒処分(戒告、業務停止、免許取り消しなどの行政処分)を行うものです。

これは現代でも変わりません。海難審判ではそもそも刑事処罰や賠償金についての議論は行われないのです。

ドレーク船長はこの海難審判で無罪となりました。しかし日本の新聞は「船長が乗客を見殺しにした」「裁判では無罪となった」と雑な報道をしました。

そして世論が沸騰し、それに押される形で日本政府はドレーク船長の出国停止を命じ、改めて殺人罪で訴えさせたのです。ここでイギリス政府は日本との関係に配慮して有罪とし、禁固三ヶ月の判決を下しました。

そしてその判決の軽さに、世論は改めて大騒ぎになったのです。

法律に明るい人なら分かると思いますが、この経緯で政府が個人を殺人罪で司法に働きかけるというのはかなりの無理筋です。法治国家として正しい措置だったのかは疑問が残ります。

2ページ目 風刺画は無関係

 

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