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『べらぼう』裏切り連発のどん底回…大切な期待や夢を失った蔦重・歌麿・定信の心情を考察【前編】

『べらぼう』裏切り連発のどん底回…大切な期待や夢を失った蔦重・歌麿・定信の心情を考察【前編】:4ページ目

蔦重を待ち受けていた歌麿の“裏切り”

定信と時を同じくして、突然の予期せぬ歌麿の「裏切り」でどん底に落ちたのは蔦重も同じでした。もともとは、鈍感な蔦重が歌麿の気持ちを踏みにじる行動をしたのが原因。

蔦重は歌麿の絵師として義理の弟として大切にしていたのですが、歌麿はそれ以上の想いを胸に秘めていたので、噛み合わない部分はありました。

西村屋(西村まさ彦)が歌麿に告げたように、蔦重は歌麿を「付き合いが長いからいいように利用している」つもりはありませんが、確かに付き合いが長いゆえの“甘え”はありました。本心で、実の弟と思っているゆえの“甘え”です。

けれど、歌麿の心の中で、蔦重への不満が膨らんでいたタイミングだったので、西村屋の言葉が水に落とした一滴の墨が広がるように、不満・疑念が広がってしまったのでしょう。

そして、吉原で妓楼主たちと昔話をしていた時、蔦重が、以前『青楼名君』を作る際、歌麿に絵を依頼するも諸事情で撤回した件を覚えていたことを驚く歌麿。
「忘れるはずねえだろ、あんな申し訳ねえこと」という蔦重の言葉に、歌麿の表情がふっと和らぎましたね。

“利用している”だけなら、こんなことを後悔するはずもありません。歌麿を売り込む会を開いたり狂歌師たちに合わせたり、一生懸命に歌麿を売り出すために努力してきた過去を思い出したのかもしれません。

蔦重の気持ちがもっと伝わっていれば、今回の決別はなかったのではないでしょうか。

【べらぼう】史実、その後の二人は?歌麿から見捨てられた蔦重が決定的に欠けていたもの

「蔦重とは、終わりにします」喜多川歌麿(染谷将太)が西村屋万次郎(中村莟玉)に告げたこの一言。永年にわたる蔦重(横浜流星)への想いを断ち切り、新たな舞台へ旅立とうとする決意が表れていました。…

かなり鈍感ではあるものの、子供のときの約束「お前を江戸一番の絵師にする」ことを一筋に頑張ってきたことは歌麿に思い出してほしいと思いました。

5ページ目 「三つ目」の歌麿だからこそわかる“恋心”

 

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