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『べらぼう』”禁句”をぶつけた蔦重の戯けにプライド高き松平定信が大激怒!互いの胸中を考察【前編】

『べらぼう』”禁句”をぶつけた蔦重の戯けにプライド高き松平定信が大激怒!互いの胸中を考察【前編】

「近頃『白河の清きに魚住みかねて 元の濁りの田沼恋しき』……なんて詠む輩もいるんですよ」

べらぼう第39回『白河の清きに住みかね身上半減』では、「ふんどし野郎(松平定信/井上裕貴)」に禁句の、“田沼”の名前をぶつけた蔦重。「よく、言った」と拍手を送りたくなるような、けれどドキドキするような「戯け(たわけ)」ぶりでしたね。プライドの高い定信が、このセリフに激怒している様子が、濃い影をまとった後ろ姿からも見てとれました。

定信の悪政に対して怒り心頭の蔦重は、周囲を巻き込みながら、己の信じる道へと暴走。そんな彼に、鶴屋喜右衛門(風間俊介)と妻のてい(橋本愛)は、本気で怒りをぶつけて説教します。

「書を持って世を耕す」から「書を持って世に抗う」ことに決め、あくまでも「忖度した無難な本屋」にはならないと「己の信じる道へと暴走」する蔦重と、そんな彼を心配する周囲の人々。

己の信じる道を突っ走ることで現実が見えなくなり、周囲の人間が本気で諌めにかかるところは、蔦重と定信は似ています。今回は、第39回べらぼうを振り返りつつ、感じ入った場面を振り返りました。

わざわざ詮議の場にまで出向いてきた定信の心中

1790年(寛政2年)10月に地本問屋株仲間が発足、自主検閲をすれば新刊の発行を認められることとなりました。そこで、蔦重は、『教訓読本』と書いた袋に入れて売れば、お上は中身まで調べないだろう予測。

行事(検閲する本屋仲間)たち”を言いくるめ、 吉原の『女遊びの指南書』を出版しました。けれども、お上にはバレて “絶版”を命じられ奉行所に引き立てられます。

以前蔦重は「田沼様のように、松平様に会って直接陳述をしたい」と言っていましたね。今回は取り調べという形ではあるものの、初めて定信と会う機会を得たことになりました。

かつて、蔦重を「大明神」と呼び崇めていた黄表紙ファンの定信。筆頭老中ともあろう幕府の重役が、一介の町の本屋の詮議にまで出てくるのは、「けしからぬので自ら見聞してやる」というよりも「蔦屋重三郎に会ってみたい」という好奇心が勝っていたのかも……と思いました。

「べらぼう」の森下脚本では、井上裕貴さん演じる松平定信は、子供っぽいところのある人物。難しい表情を作りながらも内心「初めて蔦屋重三郎に会えるぞ。どんなやつなんだろう」なというワクワク感と「どのような人間であろうと、言い負かしてやる」という気負いを感じました。(詮議の場に登場した定信からは、「よっしゃあ〜!」という心の声が聞こえたような気が……)

2ページ目 自信満々の定信に“反骨の炎”を燃やす蔦重

 

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