『べらぼう』”禁句”をぶつけた蔦重の戯けにプライド高き松平定信が大激怒!互いの胸中を考察【前編】:2ページ目
自信満々の定信に“反骨の炎”を燃やす蔦重
御三卿の家に生まれ、生活において苦労知らずの定信は、蔦重が本で吉原に客を呼び込み、「困窮する女郎や楼主たちを助ける」という思いを持っていることなど想像できるわけはありません。
「遊ぶ場所を無くせ!」と岡場所を廃止したせいで、生活に困窮した女郎が吉原に押し寄せこのままでは地獄になってしまう……と妓楼主たちも困り果てているのですが、そんなことは想像すらできないでしょう。
蔦重の本を “好色本”としか捉えない定信は、これは教訓本だと主張する蔦重に、「好色本か教訓本か決めるのはうぬではなく私だ。かようなものは二度と出さぬと誓え!」と命じるのですが……。
民の苦労を知らない・居丈高・上目線の定信の申し渡しに、「おっしゃる通りでございます!へへぇえ」と、平身低頭するような蔦重ではありません。期待通り、そんな定信に対し、蔦重の“反骨の炎”が燃え上がりました。
一瞬、考え込むような表情を見せたものの、「ふんどしに頭を下げるなどとんでもねえ。今ここで反発をやめたら亡くなった人々に申し訳ないし吉原も救えない。」と思ったのでしょう。
定信を見据え、急に、「越中守様は、透き通った美しい川と濁った川、魚はどちらを好んで住むと思われますか?」と尋ねます。とうとう、来ましたね。かの有名なアレです。間違いなく定信が激怒する、あの有名な歌です。
「魚の話などしておらん!」という定信に、「まあ、左様なことはおっしゃらず。“雲の上のお方”とお会い出来るなんて、めったねぇわけで…」と返します。蔦重の「調子のよさ」にエンジンがかかってきたのがわかりました。「ふん」と小馬鹿にする定信でしたが、“雲の上のお方”に、ちょっと気をよくしたような感じがしました。
定信は、「濁りのある水のほうが、餌も豊か、敵からも身を隠しやすい。住みやすかろう」と答えます。まんまと、蔦重の術中にハマっていくのが面白かったですね。
その答えに、蔦重は「私は……人も魚とそう変わらねぇと思うんでさ」と切り出しました。ハラハラしつつも、この後どうやって定信を言い負かすのか、ワクワクする展開となりました。
