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『べらぼう』”禁句”をぶつけた蔦重の戯けにプライド高き松平定信が大激怒!互いの胸中を考察【前編】

『べらぼう』”禁句”をぶつけた蔦重の戯けにプライド高き松平定信が大激怒!互いの胸中を考察【前編】:3ページ目

“白河の水の清きに魚住みかねて元の濁りの田沼恋しき”が登場

「人ってな、どうも濁りを求めるところがありまして。上手い飯が食え、面白ぇ遊びが出来て、怠けてても怒られない、そんなところに行きたがるのが人情だ」と説く蔦重。

定信は「そんなことは百も承知」と言い返します。自身が提唱する「論語の精神」では、“人間は欲深く誘惑に弱いもの。それゆえに論語の精神で、自分を厳しく律することが必要だ”と教えています。

蔦重のいうように定信は、「人は弱い」ということは、理屈上では分かっているはずです。

「そりゃそうだ。五つで『論語』を諳じられた世に希な賢いお方に…ご無礼いたしました」という蔦重の言い方。「お前は、論語の世界だけで、現実の世の中を知らねえだろ」という、非難めいた冷笑ニュアンスを感じたようで、ぐぬぬと怒りの表情になる定信です。

「これは御存知で?近頃、“白河の水の清きに魚住みかねて元の濁りの田沼恋しき”なんて詠む輩もいるんですよ~」と、実に、ドストレートな反撃を与えます。「田沼の名前だしちゃったか〜怒るぞこれは!」と、そばにいた奉行が思わず定信の顔を伺ったのがおもしろかったですね。

ドラマではこの瞬間、定信を背後から写しているので表情はわからないのですが、ビキビキと青筋を立てて目を剥く定信の表情が、目の前に浮かぶようでした。

さらに蔦重は、とぼけて「そういう揶揄する民はけしからんです」と言い「越中守様が、どぶさらいをやってくださっているから」と嫌味な言い方でほめそやします。

こういう嫌味な言い方をさせると、蔦重は天下一品ですね。泥水啜って這い上がってきた商売人に、坊ちゃん育ちの定信がかなうわけもありません。

さらに、蔦重は「だから、あくまでも教訓だと好色本をだせば越中守様はやはりわかっている!と評判になるはず」と、無茶苦茶な理屈をつけます。

ここの蔦重と定信のバトルは、実物でした。「世間知らずにわかってたまるかという怒り」を抑え、思い切り「戯けたセリフで最上級に皮肉る蔦重」と、「一方的に小馬鹿にされ捲し立てられ、言い返せず悔しい気持ちを抑えつつ、けれども目が血走っていく定信」の表現が見事だったと思います。

己が信じる道へとまっしぐらに突き進み、周囲がついていけなくなっていく蔦重と定信。けれども、彼らにはそれぞれに戒めてくれる人たちがいたのでした。

【後編】では、 周囲の人々の愛ある忠告・叱咤、衝撃的な処罰を受けつつ、その大ピンチを笑いとばし「そうきたか!」と唸るような起死回生のアイデアを出すという、しなやかな蔦重らしさが戻ってきた流れを考察します。

【後編】の記事はこちら↓

『べらぼう』暴走する蔦重と定信をたしなめる人々と、「そうきたか!」な蔦重マジック【後編】

松平定信(井上裕貴)の寛政の改革で、環境が悪化する吉原を救うために “女遊びの指南書”を「教訓読本」として出版した蔦重(横浜流星)は、とうとう牢に入れられてしまいます。「かようなもの(本)は二…

 

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