『べらぼう』闇堕ち寸前の蔦重を救った鶴屋と北尾重政──急転直下する森下脚本の今後の行方は?【後編】:3ページ目
平蔵を上手に使うあたりはいつもの蔦重が戻ってきた
さらに、蔦重は長谷川平蔵(中村隼人)を吉原に招きもてなします。平蔵は、倹約倹約の世の中で街では無法者が暴れるようになり、彼らを更生させる「人足寄場」の担当を定信に押し付けらていました。
前回、定信に対し家臣が「幕府の役付きになると持ち出しが多く誰もやりたがらない」と訴えていましたね。平蔵も自分の持ち出しが多く懐事情は大変な様子。それを嗅ぎつけた蔦重は、昔平蔵を騙して「本を作るからと」入銀させた50両を「返金」します。
このお金はあの時、食うや食わずで死にそうな目になっていた二文字屋の女郎たちの「米代」にしたと打ち明け、当時の女将きく(かたせ莉乃)と女将を継いだ当時の女郎はま(千鳥/中島瑠菜)が平蔵の座敷に登場し、「おかげで生き延びた」と挨拶に来ます。
河岸女郎で、飢えていて、朝顔から弁当を譲られて貪り食べていた千鳥がお女将の後継となり生き延びていたのが感慨深かったですね。
「返金」を一度は遠慮する平蔵ですが、蔦重たちの「吉原も出版も救ってほしい」という願いを引き受けました。
平蔵は定信から、地本も書物と同じように株仲間を作り、「行事」を立てて「改」を行い、行事の差配によるお触れに差し障りのない本なら出版していい、という言葉を引き出します。
規制は厳しいものの、新本を出版するチャンスを確保したのです。
長谷川平蔵に瀬川こと花野井を思い出させ、金を受け取らせて、定信との話し合いを依頼するという流れは、いつもの策士でひとたらしの蔦重が戻ってきた感じです。
今回で、抱え込んだものの重さに押しつぶされて冷静さを失ってしまった蔦重が、いままで関わってきた人々に助けられ、本来に自分を取り戻しました。

