【べらぼう】幸せを見つけた歌麿、定信の真意、おていの恐れた事態が現実に…?9月14日放送の解説・レビュー:3ページ目
歌麿ときよの結婚
蔦重とおていさんの夫婦関係が盤石なものとなるにつれて、今ではすっかり「単なる抱えの絵師」扱いになってしまった歌麿。
どこか不満とやりきれなさの中で再会した”きよ”は、耳が聞こえず、言葉も話せませんでした。
「きよ 一切 廿四文」
差し出された紙切れに、歌麿は何とも言えない気分になります。ちなみに一切(ひときり)とは線香一本が燃え尽きるまでの時間で、およそ半刻ほど。現代の感覚なら、だいたい「1時間500~1,000円(税込み)」と言ったところでしょうか。
彼女の辛く苦しい暮らしに寄り添う中で、彼女が何を考えているのかを考え、そして彼女の姿を絵に描くのが楽しくなっていきます。
初めて「ちゃんとしたい」と生きる意欲を見せた歌麿は、かつて描けなかった笑い絵も描けるように。幸せを実感したことで、かつてのトラウマにも向き合えるようになったのでしょう。
そんな歌麿の様子に、蔦重は心から「ありがた山にございます」礼を述べたのでした。
蔦屋の「女将」おていさん
歌麿夫婦の新生活を援助するべく、笑い絵を百両で買い取った蔦重。義弟の門出を喜ぶその横で、おていさんが笑い絵を真剣に見ています。
これは別に好きだからではなく、歌麿の心血を感じるのが、板元としての礼儀だから。
実におていさんらしい心意気ですね。彼女は蔦屋の女将だから、作家の一人ひとりを理解しようと努めているのでしょう。
その一方で、夫が気前よく出してしまった百両の回収計画にも余念がありません。やはり彼女は蔦屋の女将だからです。
何だかやたらと蔦屋の女将アピールをするのは、先週の意趣返しでしょうか。
それはともかく、恋川春町『鸚鵡返文武二道』に対しては「おふざけが過ぎる」と危機感を示していました。
春町は「ふざけているのではなく、むしろ諌めるつもりで書いた」と応えますが、なら尚さら不遜で無礼ととられるでしょう。
※諫言とは本来、然るべき重職の者が命懸けで行うものであり、主従関係にもない蔦重や春町からアプローチする性質の行為ではありません。
慎重論に傾きかけたところへ、次郎兵衛(中村蒼)がやって来て「定信は黄表紙好き」「しかも蔦重と春町贔屓」という情報をもたらします。
これで行ける!と思ってしまったのか、おていさんの懸念を押し切る形で『鸚鵡返文武二道』は出版されたのでした。
【べらぼう】恋川春町の破滅のきっかけ『鸚鵡返文武二道』は実際どんな物語なのか?蔦重の運命も暗転
第36回放送「鸚鵡(おうむ)のけりは鴨(かも)」
定信(井上祐貴)は、蔦重(横浜流星)の出した新作の黄表紙に激怒し絶版を言い渡す。喜三二(尾美としのり)は筆を断つ決断をし、春町(岡山天音)は呼び出しにあうが…。
※NHK大河ドラマ「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~」公式サイトより。
サブタイトルの「間違凧文武二道」とは、①人々による勘違いと②蔦重らの読み違いをかけていたのですね。
天高く揚げていた凧の糸が切れてしまい、蔦重らの運命が暗転していく様子が描かれていました。果たして春町の運命やいかに……心して見届けましょう!




