【べらぼう】幸せを見つけた歌麿、定信の真意、おていの恐れた事態が現実に…?9月14日放送の解説・レビュー:2ページ目
『鸚鵡言』凧揚げで世が治まる?定信の真意は
……その術(すべ)様々なれど 紙鳶を上ぐるに外ならぬ 治国(ちこく)の術はもとあるを知るべし……
【意訳】政治の手法は様々あるけれど、つまるところは紙鳶(たこ。凧)揚げに他ならない。国を治める手法には、根本原則があることを知るべきだ。
定信が書いた『鸚鵡言(おうむのことば)』にあるこの一節が、人々によってトンチキな誤解を受けていました。
凧を揚げて世が治まるなら、実にほがらかな限りですね。おていさん(橋本愛)でなくても、皮肉の一つも言いたくなるでしょう。
ちなみに野暮とは百も承知で、この一節を解釈しますと……。
「政治とは凧揚げのように①風を読み②風に乗せ③適宜に糸を張ったり緩めたりしながら、民衆を導いていくのが肝要だ」
と、定信は言いたかったのだと思います。また大前提として④日頃から凧や糸をしっかり手入れしておくべきこと、は言うまでもありません。
定信が贈った「10万石の賄賂」
とまぁ理想的な治世を実現しようと、ふんどしの守様は大張り切り。しかし主君の徳川家斉(城桧吏)は早くも大奥で女遊びに耽り、一橋治済は贅沢な暮らしを改めるつもりなどありません。
定信が「政に励む務めを」と言えば、家斉は「余は子作りが得意だから、政は得意なそなたがやればいい」と聞く耳持たず。
定信が「その見事な装束は何か(=倹約しろ)」と言えば、治済は「島津が用意してくれたから一文も使っていない」と馬耳東風。
それは賄賂ではないか……定信が「示しがつかない」と言えば、治済は能面を差し出し「10万石の賄賂で(田安家10万石と引き換えに)老中首座に就いたのは誰だったっけ?(意訳)」と切り返します。
誰だって、叩けば多なり少なりホコリは出るもの……清廉潔白をもって今重忠に準(なぞら)えられた定信も、痛いところはあるのでした。
にしても、治済の「世継ぎを作るのは上様にしかできぬが、政など足軽上がり(田沼意次)でもできる(意訳)」というのはご挨拶ですね。今も昔も、政治家一つで国や暮らしが大きく変わることは、言うまでもありません。

