「べらぼう」が描く問題はまるで今の日本。怒りで暴徒と化す ”新之助の義” に粋に訴えた ”蔦重の義”:2ページ目
長屋の連中に言い返したみの吉の正論
そんな長屋の住人にも、米や酒を差し入れする蔦重。最初は皆ありがたがって喜びますが、「田沼様が米を出すよう便宜を図ってくれたおかげ」と言う蔦重の言葉に、「田沼だと!」といきなり色めき立ってしまいます。「田沼のまわしもの」だ罵倒し、周りの人間を煽る大工の長七(甲斐翔真)。
NHKの登場人物紹介では長七は「短気でケンカっ早いが、理不尽を見過ごせないまっすぐさを持つ。」とありますが、筆者には今のところ、“人の話を聞いて理解しようとせず、その場の状況でカッとなり感情的に「そうだ!やっちまえ」と、周囲を煽る陰謀論に染まりやすい現代の若者”のように映ってしまいました。
そんな、態度も体もでかいマッチョな長七に対し、小柄で華奢(前回、劇中劇で遊女の役をやってましたね)で、いつもは物腰の柔らかい耕書堂の手代・みの吉(中川 翼)が「じゃ、この酒飲むなよ!うちの商いに文句あんなら、この酒飲むのはおかしいだろ!」と、血相変えて怒ります。
「あいつら言ってることとやってることが違う」というみの吉の怒りはごもっとも。言う時は言うみの吉はかっこよかったですね。「お前よぉ」とたしなめる蔦重も、大店の主人らしく様になってきました。
長七と蔦重たちの間に入ってとりなした新之助ですが「蔦重が田沼の世で一番成り上がった男かもしれない。もうここには来ないほうがよい」と言います。貧困と飢餓で殺気だっている長屋の連中にとって、蔦重は田沼の手先で「うまい汁を吸っている」人間にしか見えません。「ここに来ると危険だ」という思いがあったのでしょう。
