大河『べらぼう』過去回シーンが伏線に…凄惨な過去の亡霊に苦しむ歌麿、救えぬ蔦重【前編】:3ページ目
「枕絵」が悲惨な過去を鮮やかに呼び覚まし苦しめる
蔦重は、歌麿に新しい本の絵を依頼し、さらに「自分自身の絵を描くよう」と注文を付けます。そして、提案したのは『枕絵』でした。性行為や性風俗を描いた絵画のことで「春画」と呼ぶようになったのは、明治時代から。江戸時代は「枕絵」「艶本」「笑い絵」などと呼ばれて、親しまれていました。
当時の「枕絵」は滑稽・風刺的な誇張表現も織り込まれ、単なるポルノとは異なる「粋な演出」が組み込まれていたそうです。
「枕絵?」と、とまどう歌麿に、「有名な絵師は枕絵を描いて名を売っている。表には出ないから自分の自由にわがままに描けるんだ」といいます。
「わがまま に生きることを自由に生きるっていうのさ。我儘を通してんだから、きついのは仕方ねぇよ」
蔦重の中に、平賀源内(安田顕)のこの言葉が刻まれていたのでしょう。
さまざまな枕絵を歌麿に見せて「好きな女を思い浮かべて、一緒にどうしたいか想像しろ」とアドバイスしますが、歌麿の脳裏に浮かぶのは、鬼畜の母親(向里祐香)の姿でした。
虐待親なのに、酒を飲んで機嫌のいい時だけ「おっぱい吸うかい」と唐丸を自分の胸元に抱き寄せる母親。けれど、歌麿はちょっと嬉しそうな表情を浮かべていました。いくら鬼でも、優しくされると「こっちのほうが本当の母親なんだ」という、はかない期待を寄せてしまっていたのでしょう。
そんな母親を火事の時に見捨てたという罪悪感から、下絵を描いている最中に、 “あたしを描いて名を上げようってのかい? 殺しただけじゃ飽き足らず” と話しかけてくる母親の幻覚を見てしまいます。
さらに、自分が川に突き落とした浪人(高木勝也)まで幻覚で現れ、二人(の幻覚に)「これが人殺しが描く絵かい」と嘲笑われて苦しむのでした。
