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『べらぼう』歌麿が画名を「千代女」にした本当の理由…蔦重を巡る“三人の女”に隠された真意【後編】

『べらぼう』歌麿が画名を「千代女」にした本当の理由…蔦重を巡る“三人の女”に隠された真意【後編】:3ページ目

自分の名前を「歌麿門人 千代女」と書いた本当のわけ

蔦重が不景気をぶっ飛ばせ対策で出した『歳旦狂歌集』。狂歌人気が絶頂の中、挿絵の入った黄表紙の形態をとる狂歌集というユニークなものでした。

計5部が出版され、絵は2部を北尾政美(高島豪志)、1部を歌麿、『年始御礼帳』と『金平子供遊』の2部を「歌麿門人 千代女」が担当。史実では、どうしてその名前にしたのかは不明だそうです。

ドラマの中では、絵に彩色をほどこする歌丸に、「署名が『歌麿門人 千代女』となっているのをなぜ?」と蔦重が尋ね、歌麿は「いかにも売れてる感じでめでたくね?俺に弟子がいるってよ」と答えます。

この時の、歌麿の「生まれ変われるなら 女がいいからさ」の解釈は人によって異なるようです。

SNSでは、歌麿は蔦重を愛し自分が女房のような存在だと思っていた。けれど、ていの出現で「自分は“男”だから愛する蔦重とは結ばれない」「“女”に生まれ変わり蔦重と結ばれたい」とせめて、そんな自分の“女心”を名前に託した……という見方もあります。

けれども、筆者は、前述したように、歌麿の蔦重への想いは男性同士の「恋愛対象」といより、「子が“親”に持つ無償の愛」だと感じます。

「自分が一番大切な存在でいたい。自分のことを愛してほしい。そばにいたい」

と、一途に願う(というか「乞う」)想い だと感じました。

けれども、「唯一無二」で「一番」の家族“妻”というポジションにはなれない。

そんな心情から出たセリフだったと思っています。

「歌麿門人 千代女」と署名したのは、そんな自分の心情をそこに書き残し、「蔦重から親離れしよう」という決意も込められていると感じました。

もちろん、そんな歌麿の心の動きなどは何も気が付かない、いつも通りの鈍感な蔦重でした。

たぶん、人の心の機微に長けていた平賀源内(安田顕)なら、この歌麿の感情はすぐに理解してくれ、彼の心が軽くなるような粋な言葉をかけてくれたことだろう……と、源内先生の不在が惜しまれました。

4ページ目 史実では美人画の大家となるものの

 

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