『べらぼう』差別に挑む蔦重の覚悟!「本」への想いが魂でつながった蔦重とていの心情を考察【後編】:3ページ目
お互いに出会うべくして出会ったソウルメイト同士
けんもほろろに厳しい表情で、蔦重のオファーを断ったてい。けれども、「丸屋」の暖簾を畳んだりふとした瞬間に「一緒に本屋をやりませんか?」「女将さん、本当は店続けててえんじゃねえですか?」という言葉を思い出します。
それもそのはず。筆者としては、丸屋売却にあたり、鶴屋を筆頭に日本橋本屋の旦那衆誰一人として、ていの「丸屋を続けたい」という気持ちをないがしろにしていたように感じました。
本をこよなく愛するていが元夫に騙され、大切な本と本屋を手放さざるおえないという心情に、誰も寄り添っていないという感じも。
鶴屋(風間俊介)にいたっては、丸屋うんぬんよりも「絶対に吉原者に、それも蔦屋などにやらせてたまるか」という憎しみのほうが勝っているように思いました。
ていが日本橋の旦那衆に『韓非子』を引いて挨拶するのを、鶴屋は「あ〜話長引きそうだな〜」という感じで割って入り、話を終わらせ、旦那衆も「いったい何の話だ?」という表情でしたね。
何となく皆が「女のくせに学があり過ぎて、漢籍なんぞそらんじ始めてうとましい」と思っている感じが漂っていたように思えます。
話をバッサリ、さえぎられて黙り込んでしまう、てい。もしかしたら、過去にも何度もこのような場面があったのでしょう。腹立ちも悔しさも顔に浮かべず無表情のまま黙り込んでしまったていに、“孤独”を感じました。
何も気が付かない日本橋の旦那衆と比べて、初めて会ったのに「本当は、店を売りたくない。本屋を続けたい」という本音を、よりによって蛇蝎の如く嫌ってる吉原者の蔦重に指摘されたてい。
ひょっとしたら、初めての「父親以外の味方かも」と漠然と感じたのではないでしょうか。(お父さんは、ていが漢籍を読むことを自慢に思っていましたね)
「本」を愛する気持ちは同じ。「夢」を同じくする二人はこれからどのような「本屋」を作っていくのでしょうか。瀬川とはまた別の意味のソウルメイト同士の活躍がとても気になります。
