毎年12万人超が集う神秘の奇祭!京都・宇治「県祭り(あがたまつり)」その驚くべき風習を紐解く【前編】:2ページ目
暗闇の中で縦に横にと大暴れする梵天
それでは、6月5日深夜に行われる「梵天渡御」の流れを「宇治神社」「縣神社」の両社から見ていきましょう。
「宇治神社御旅所」では、23時になると「県祭奉賛会」の担ぎ手たちがお祓いを受け「梵天渡御」に出発し、約1時間半ほど、独自ルートでの巡行を行います。
御旅所前では、神人を乗せた梵天御輿が前後左右に大きく振られ、倒され、JR宇治駅前、宇治橋西詰では、梵天を高速回転させる、”ぶん回し”で気勢を上げます。
一方、「縣神社」の「あがた祭」は、大祭式・朝御饌ノ儀(あさみけのぎ)から始まります。この頃には、宇治橋通り・県通り・本町通りに数百店の屋台が出始め、22時頃まで大いに賑わいます。
そして17時、夕御饌ノ儀(ゆうみけのぎ)が斎行された後、23時に梵天が地元の梵天講の若者達に担がれ、動き出すのです。
23時半頃、本殿において燈火を消し、真っ暗闇の中で神移しの秘儀が斎行されます。この間は、ストロボやフラッシュを使った写真撮影は厳禁です。
神事の後、梵天を担いでご神木の周りを3周し、拝殿前に安置。そして深夜0時になると、いよいよ「渡御ノ儀」である梵天神輿が出御となります。
境内を練り歩き鳥居から表に出た梵天は、暗闇の中、旧大幣殿前で、”ぶん回し”や”差し上げ”など勇壮に走り回わると、境内に帰り、梵天奉安所で着御の儀の後、本殿に帰着します。
街に出ると暗いとは言っても街灯の灯りがあるので、”ぶん回し”や”差し上げ”は目視することができますし、この間はフラッシュを使用した写真撮影も可能です。
そして、6日の午前1時頃に梵天が境内に戻され、電灯が消された暗闇の中で神事が斎行されます。こうして、「暗闇の奇祭」と呼ばれる「県祭り」は幕を閉じるのです。
すべての神事が終了した後、梵天の丸い御幣から奉書紙が抜き取られ、参列者に授与されます。この紙には、縁結びや子授けの御利益があるとされています。
それでは[前編]はここまで。[後編]では「県祭り」で行われていた驚くべき風習と、日本古来の祭りに込められた深い意味をひも解いていきましょう。
【後編】の記事はこちらから↓
”種貰い祭”と呼ばれた所以がコレ!神秘の奇祭「県祭り」に隠された禁断の風習とは?【後編】
※参考文献
網野善彦著 『日本の歴史を読み直す』 ちくま学芸文庫




