キンキン野郎と濡れ手に粟餅…【大河べらぼう】2月9日放送の振り返り&掘り下げ解説:3ページ目
恋川春町『金々先生栄花夢』とは?
劇中で蔦重と鱗の旦那が打ち合わせていた新しい物語。手代の源四郎という名前にピンと来た方もいるのではないでしょうか。そんな『金々先生栄花夢』の筋書きは概ね以下の通りです。
主人公の金村屋金兵衛(かなむらや きんべゑ)は、立身出世を夢見て江戸に旅立ちました。
道中の粟餅屋で餅を注文し、餅が蒸し上がるまでついうたた寝してしまいます。
その夢の中で莫大な財産を譲り受けたところ、悪い遊びを覚えて放蕩三昧を尽くしました。
気前のよい金兵衛をみんな歓迎し、金々先生などとおだてますが、それは金兵衛の金が目当て。誰も金兵衛自身を見てなんかいません。
金兵衛はその虚しさを紛らわすようにますます散財し、みるみる財産は失われていきました。
いよいよ家運が傾くとなるや、金兵衛は手代の源四郎に裏切られ、勘当されてしまいます。
金の切れ目が縁の切れ目、誰からも相手にされなくなり、途方に暮れたところで目が覚めた金兵衛。
聞けば注文した粟餅が蒸し上がったとのこと。ずいぶん長い時間が過ぎていたと思ったら、そのくらいしか経っていなかったのです。
まぁ人生とは実に色んな意味で儚いものだ……そんな教訓が込められていました。
ちなみにこのストーリーには元ネタがあり、唐代の伝奇小説『枕中記(ちんちゅうき)』に同じような物語が収録されています。
四字熟語の「黄粱一炊(こうりょういっすい)」「邯鄲之夢(かんたんのゆめ)」「盧生之夢(ろせいのゆめ)」「一炊之夢(いっすいのゆめ)」などの元となり、いずれも世の儚さと人間の浅ましさを後世につたえました。
そう言えば、本作のサブタイトルも~蔦重栄華乃夢噺~。この辺りから、着想を得たのかも知れませんね。
