大河「べらぼう」に登場!遊女を”花”に見立てた蔦屋重三郎 初の出版本『一目千本』を解説【前編】:2ページ目
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花魁ひとりひとりの個性を「花」に見立てた本
『一目千本』は、吉原遊廓の遊女のガイドブックでした。
けれどもただ楼閣の場所や遊女の名前を紹介したのではありません。
花魁ひとりひとりの個性や性格などを「花」に見立て、花の画で紹介する画集のようなものだったのです。
なぜ、「花」に見立てたか、それは当時の生花からヒントを得たものでした。
生花は、室町時代に成立した「立花(りっか)」という様式美を重んじたおおがかりなスタイルから、江戸時代になると「抛入(なげいれ)」というスタイルに変化。
形式にとらわれず、花の姿をそのままいかす生け方になったのです。
この抛入花スタイルの生花は、江戸庶民の間でもかなり流行っていました。
花魁ひとりひとりを花に見立てて紹介するという手法は、伝わりやすかったのでしょう。
蔦重が『一目千本』を出版する4〜5年前に、洒落本作家の蓬莱山人が、各界の著名人を花になぞらえた『抛入狂花園』という本を出し話題になったという下地もありました。
クラウドファンディング形式にして人気浮世絵師に依頼
さらに、蔦重は『一目千本』を、入銀本(にゅうぎんほん)という出版形態で始めたのです。
入銀本とは、現代でいうと、クラウドファンディングや予約販売のようなもので、本を印刷する前にさまざまな人からお金を集めて本の制作費用を確保したうえで作るというシステム。
一般販売はせずに、妓楼や引手茶屋など(ドラマでは床屋などにも)にフリーペーパーのように「見本本」として置いてもらい本の知名度を上げ、受注生産形式にして在庫をかかえるリスクを回避する方法をとったのです。
さらに、蔦重は「花の画」を描く絵師として、のちの浮世絵界に大きな影響を与えることになった江戸時代中期の浮世絵師・北尾重政(きたおしげまさ/橋本淳)を起用しました。
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