手洗いをしっかりしよう!Japaaan

遊びせむとや…実に業が深い後白河院がまとめた平安時代の今様集『梁塵秘抄』の歌を紹介!

遊びせむとや…実に業が深い後白河院がまとめた平安時代の今様集『梁塵秘抄』の歌を紹介!:4ページ目

女の怨みと浮気男の言い分

(三三九)われを頼めて来ぬ男 角三つ生ひたる鬼になれ
さて人に疎まれよ 霜 雪 霰 降る水田の鳥となれ さて足冷たかれ
池の浮草となりねかし と揺りかう揺り揺られ歩け

※『梁塵秘抄』巻第二

【意訳】私をその気にさせておきながら、その後まったく音沙汰のないあの男が、角三本の鬼になってしまえばいいのに。そして人から嫌われるがいい。

あるいは冬の冷たい田んぼの水に足を漬ける水鳥になってしまえ。霜が降り、雪や霰が降りしきる中、足が凍えることだろう。

あるいは池の水草となり、風の吹くままどこにも安住できずに彷徨い歩くのがお似合いだ!

(三四二)美女(びんぢょう)うち見れば 一本葛(ひともとかづら)にもなりなばやとぞ思ふ
本より末まで縒らればや 切るとも刻むとも 離れがたきはわが宿世(すくせ)

※『梁塵秘抄』巻第二

【意訳】美女を見るたび、私は葛の蔦(つた)になりたいと思う。
美女という樹の根元から枝先まで、びっしりと絡みつきたい。たとえ切り刻まれる末路をたどろうとも、離れることが出来ないのは私の宿業なのだ。

……浮気男に対する女の怨みと、浮気男の言い分が実に業深く表れています。

女の恐ろしさはもちろんのこと、男の執着ぶりもかなり恐ろしいものです。

どちらもなかなか理解に苦しみますが、当人らは他人の解しがたい懊悩を抱えているのでしょう。

終わりに

まだまだ『梁塵秘抄』には続きがありますが、また別の機会に紹介できればと思います。

仏の教えを説いているのかと思いきや、人間の宿業を謡うものもあり、当時の人々も色んなテーマを謡っていたのですね。

皆さんも『梁塵秘抄』を読んでみると、お気に入りの謡が見つかるかも知れません。

※参考文献:

  • 植木朝子 編『梁塵秘抄 ビギナーズ・クラシックス 日本の古典』角川ソフィア文庫、2014年5月
 

RELATED 関連する記事