権力の絶頂を極めた藤原道長がその死を悲しんだ末娘・藤原嬉子とはどんな女性だったのか【光る君へ】:2ページ目
藤原嬉子の魂を呼び戻す?
嬉子が亡くなった報せを聞いた道長は、大変動揺したと言います。
「直ちに陰陽師を呼べ!魂呼(たまよばい)をさせるのじゃ!」
魂呼とはその名の通り、魂を呼ぶこと。冥界へ旅立とうとしている魂を呼び戻して、生命をつなぎ止めるための儀式です。
「お言葉ながら、魂呼は陰陽師の職務違反では……」
「うるさい、今すぐやれ!」
「……ははあ」
道長の厳命とあらば仕方ありません。呼び出された陰陽師の中原恒盛(なかはらの つねもり)らは、さっそく魂呼の儀式にとりかかりました。
中国の古典『礼経』によると、屋敷の屋根に上り、その東側で衣を振りながら三度名前を呼ぶのだそうです(檀弓編三)。
これで死者が甦るといいのですが……結局のところ、嬉子が息を吹き返すことはありませんでした。
それどころか、声を聞かれたか姿を見られたかで魂呼の儀式を行ったことがバレてしまいます。中原恒盛は陰陽師の職務違反として注意を受けたのでした。
道長の命令に従っただけなのに、気の毒でなりませんね。後から道長のフォローがあったことを信じるばかりです。