紫式部が才能を隠すため“痴れ者“のフリをした処世術「惚け痴れ」とは?能ある紫式部は爪を隠す!:2ページ目
式部の処世術「惚け痴れ」
式部の父親は、当代一流の漢学者でした。その影響もあり、彼女は漢学に秀でていました。
しかし「なぜ女性が漢字を読むのか」と非難されていた時代にあっては、その才能を隠しながら生きていくしかなかったのです。
それはいわば、紫式部の処世術でした。これについては、『紫式部集』に綴られた一節を、次のように独自の解釈を行っている学者もいます。
鬱陶しい女房たちとは、できれば付き合いたくありません。しかし仕事上、顔を突き合わせなければならないこともあります。その時はどうするかというと、彼女はひそかに「惚け痴れ」を実行していました。
問いかけられても、まともに答えないのです。「さあ、存じませんわ」「私、不調法で」などとかわして、ぼけてものの分からない人間を演じきるのです。すると相手は呆れ、やがて彼女に構わなくなります。痴れ者と思われても一向に構わない――。
この「惚け痴れ」は実際に式部が『紫式部集』に書き記している言葉で、「ぼけて愚かになる」という意味です。
実も蓋もない言い方をすれば、バカのふりをしたということですね。