蛇を殺した祟りで病死…藤原道兼の嫡男・藤原福足君とはどんな人物だった?その短い生涯をたどる【光る君へ】:3ページ目
道隆、とっさのナイスフォロー
……いひおこづらせ給ふべきか、又にくさにえたへず、追ひおろさせ給ふべきかと、かたがた見侍りし程に、この君を、御腰の程にひきつけさせ給ひて、御手づからいみじう舞はせ給ひしこそ、……
※佐藤球『大鏡』右大臣道兼より
【意訳】福足君を叱りつけるのか、それとも見苦しいから連れ去ってしまうのか。
周囲が固唾を呑んで見守る中、道隆は福足君をやさしく抱き寄せ、小さなお手手をとって一緒に舞い始めたのです。
【コメント】お、とっさの機転を聞かせて、可愛らしくお遊戯を始めました。
そうですよね、子供だから難しい舞よりも、こっちの方が楽しいでしょう。
兼家は上機嫌、一同胸を撫で下ろす
……楽をまさりおもしろく、かの君の御恥もかくれ、その日の興もことの外にまさりたりけれ、祖父殿もうれしと思したりけり。父おとゞはさらなり。……
※佐藤球『大鏡』右大臣道兼より
【意訳】演奏も再開されて、道隆と福足君は愉快にお遊戯。宴席の空気もすっかりほぐれ、兼家も大喜び。道兼(父おとゞ)は胸を撫で下ろしたのでした。
【コメント】ひとまずみんな楽しそうで、よかったですね。終わりよければすべてよし、道隆の機転に感謝したことでしょう。
名を上げた道隆、引き立て役になってしまった道兼
……よその人だにこそ、すゞろに感じ奉りけれ。かやうに人のためなさけなさけしき所おはしましけるに、など御末かれさせ給ひにけむ。……
※佐藤球『大鏡』右大臣道兼より
【意訳】それにしても、道隆の機転は立派なこと。道隆の一族は末永く栄えることであろう。人々はそう賞賛しました。
【コメント】道隆の評価が高まる一方で、道兼は子供に芸を無理強いさせたことなど、評判を落としてしまったようです。
それにしても、つくづく不憫な道兼ですね。