雪面から突き出た腕、上半身裸の遺体…遭難者たちの怪しき最後。明治時代に起きた謎の遭難事件とは?:3ページ目
当時は現在の様にレジャーの登山は一般的ではありません。猟師しか山に入らないのであれば、雪は踏み固められていない可能性が高いので、そういった場合はラッセルといって雪をかき分け進みます。その際、日中緩んだ雪が衣類や靴を濡らすこともあり、知らず内に凍り付いていることもある、十分注意が必要な時期です。
そして極寒の状態なると「矛盾脱衣」という現象が起きることがあります。
人は長時間極寒に晒されると、皮膚血管を収縮させて体内から温めようとする働きが強くなります。すると体温と外気温との間で温度差が生じ、脳が「暑い」と錯覚してしまうのです。もしかしたら4人にも同じようなことが起きたのかもしれません。
思いがけず大雪が降り、5人とも疲れ果て仮小屋に入ったものの、日中にかいた汗が急激に冷えて低体温症に陥り、火をおこそうとしたが湿気などで思うように火が付かず、そのうち4人が意識障害で室内を暑いと錯覚して、小屋の外へ跳び出して服を脱いでしまった…そんな筋書きがたてられなくもありません。ただ、ベテランの猟師たちがそんな初心者のような気のゆるみを起こすでしょうか…。
紫色の手の謎は、急激に血管が収縮して内出血を起こしてしまったのでしょうか。
山の中で何が起こったのか…それはもう知る由もありません。
しかしディアトロフといい、この明治の遭難事件といい、この解けない謎は筆者の中に永遠に棲み続けてしまうことでしょう。
参考:新潟県立図書館