「いが餅」の味わい
和菓子が好きな人なら、一度は「いが餅」を食べたことがあるでしょう。大福や普通のまんじゅうなどと比べると知名度は低いですが、日本の伝統的な和菓子のひとつです。
「餅」という名ではありますが、餡を包んでいるのは、うるち米をひいて作った上新粉です。上新粉をこねて作った生地で餡を包むという作り方は、主に新潟県に伝わる「しんこ餅」とも共通していますね。
いが餅の特徴は、丸いフォルムと、奥ゆかしいパステルカラーによって色づけられたもち米が載っている点でしょう。この色は淡い桃色や黄色、緑色などさまざまな種類がありますが、地域によっては一色だけしか用いないこともあるようです。
ちなみに、色がついているとそれだけで何かの味がしそうですが、特に餅以外の味はしないのが一般的です。ただ、製造元によっては緑色のカラーにはヨモギの風味を加えるなどの工夫もなされているようです。
いが餅の起源は?
さて、このいが餅の起源については、多くの説があります。いが餅自体が東北~中国・四国地方に分布しているのでさまざまな説があるのも当然かも知れません。以下でいくつかご紹介しましょう。
まず、いが餅の「いが」は「伊賀」であるとする説があります。現在の愛知県の三河地域に伝わる「いがまんじゅう」は、もともと三重県の伊賀から伝わったという伝承があるのです。あの、忍者で有名な伊賀の里ですね。
また、平安時代の厄除けの儀式を起源とする嘉祥菓子にはズバリ「伊賀餅」が含まれており、時代が下ると、京都では民間にも広まりました。これが「いが餅」として全国に広まった可能性もあります。
それから三重県鈴鹿市には「いかもち」という言葉がありますが、これは、お米を炊いた際の香りを餅に移そうとする意味の言葉で、「飯の香りの餅」として伝わっており、これがいが餅の起源になったとも考えられます。
ちなみに、埼玉県にも「いがまんじゅう」という有名な郷土料理がありますが、この発祥地は鴻巣市とはっきりしており、饅頭と赤飯をあわせて炊くという独特のものです。名前も栗のイガイガに由来しており、さしあたりいが餅とは関係がなさそうです。