中学卒業した男子たちが結婚まで寝泊り。三重県・答志島(とうしじま)に残る風習「寝屋子制度」とは?

雲川ゆず

日本各地では、古くから伝わる伝統や風習が今でも残っていることがあります。なかでも、三重県鳥羽市の答志島(とうしじま)に残る「寝屋子(ねやこ)制度」は、ユニークなもののひとつではないでしょうか。

「寝屋子制度」は、以前は伊勢志摩地方の各地で見られたようですが、現在は答志島の答志町に残るだけとなっています。地域の絆を生むこの制度について、詳しく見ていきましょう。

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「寝屋子制度」とは?

伊勢湾には、鳥羽市の4つの島があります。今回ご紹介する「寝屋子制度」が残っている答志島はそのうちのひとつです。

「寝屋子制度」は、中学を卒業した男子が同級生5~6人とともに別の家で寝泊りをするというもの。仲間の誰かが結婚をするまで、約10年ほど寝泊りは続くと言います。

「寝屋親」と呼ばれる、男子たちに部屋を貸し、世話する家主のもと、戸籍上のつながりのない男子が兄弟のように絆を深めていく制度です。

「寝屋親」は責任も大きいことから、誰でもなれるわけではありません。若者たちの親が相談し、人望があり、子育てや教育に関心のある家が選ばれます。

「寝屋子制度」で心構えを学ぶ

以前は若者が全員寝屋子に入っていたようですが、現在では主に長男が寝屋子に入る風習となっています。寝屋子制度では、男子たちは1日中その家にいるのではなく、それぞれの自宅で夕食を取ってから寝屋子の家に集まり、朝になるとまた自宅に戻ります。

それでも、そこで生まれる絆は強く、男子たちはお互いを「朋輩(ほうばい)」と呼ぶそうで、その仲はずっと続いていくようです。

また、若者たちは寝屋親と過ごすなかで、島で暮らす心構えを学んでいくといいます。

2ページ目 「寝屋子制度」の始まりは?

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