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馬を贈られた時の正しい受け取り方とは?北条重時『六波羅殿御家訓』にみるマナーがこちら

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をやかたより、馬なんとを得ては……

一 をやかたより、馬なんとを得ては、をりて轡に手をかけて、人にとらすへし、庭に引立させて、人をもて、それ取てつなけなんと下知すへからす、して簾こしに返事すへからす、さる人をは烏滸の者と申也、但親かたと云とも様によるへし、年も若く、時のきらもなく、恩も蒙さらむには、餘に折目きひしく敬へは、見人いかにと思、還てあまり■ならむ方もありぬへけれは、若黨の中にさる者と知られたらんにとらすへし、

※『六波羅殿御家訓』より(第19条目)
※原文はカタカナですが、読みやすいよう平仮名に直しています。
※■は判読不能。

一、主君(御館)より馬などをいただいた場合。

(使者が馬を曳いてきた)庭へ降りて自ら轡(くつわ)をとり、それから家中の者へ渡すようにせよ。決して家人に「つないでおけ」などと命じてはならない。また簾(すだれ)も挙げずに口先でお礼だけ言うような態度は論外である。

ただし主君と言ってもこちらの方が年長や目上で、(代替わり直後など)関係も浅い場合、あまり丁重すぎても変に思われてしまう。そういう時は若党の中でも名のある者に受け取らせよ。

……せっかくの頂き物を手にとりもしないで「じゃあこれ、しまっといて」なんてやられたら、贈った方はがっかりしちゃいますからね。

後で使者から報告を受けた相手が「贈り甲斐のないヤツだな」と思われないよう、ちゃんと庭先に下りて、十分に吟味することで感謝の気持ちが伝わるようにしましょう。

とは言え、主君であっても互いの力関係や距離感によって対応の微調整は必要。あまり尻尾を振り過ぎるのも考えもので、TPOに応じた振る舞いが求められます。

次の教訓も似たような内容です(こちらは「人の」という表現なので、別に目上とは限りません)。

一 人の給たらむ馬を、即無左右人にあつくる事すへからす、況や人にとらすへからす、一日なりとも我馬屋■たてヽ、次々の日なんと人にも預くへし、即馬屋に立てつると聞は、主歸聞て悦思也、又馬を見すして、無左右引入るヽ事すへからす、進る馬は御気色いかヽありつると問は、軈人の許へつかはされ候つると云はヽ、本意なく思て、此殿には何なる志たりとも、思も知まし■よやとて、浦見を残す也、

※『六波羅殿御家訓』より(第20条目)

贈り主「(帰って来た使者に)どうだ、贈り物は喜んでいただけたか?(進ずる馬は御気色いかがありつる)」

使者「それが……すぐによそへ預けてしまわれました(やがて人のもとへつかわされそうらわつる)」

何だよ、せっかく贈ったのに……あの人には何を贈ってもしょうがないな(此殿にはいかなる志たりとも、思いも知るまじ)と、要らぬ怨み(=浦見。縁起のよい当て字)を買うことになってしまいます。

終わりに

以上、北条重時『六波羅殿御家訓』よりプレゼントの受け取り方を紹介してきました。ここでは目上の方から馬を贈られた場合にフォーカスしましたが、これは誰から何を贈られた場合も同じこと。

いかなる立場や力関係であれ、相手も(あなたと同じく)血の通った人間であることを鑑みれば、とるべき対応はおのずとわかる事でしょう。

幼少期から苦労を重ねたことで人格を磨き、徳操を養った重時らしい教えと言えます。現代に生きる私たちも、ぜひ見習いたいものですね。

※参考文献:

  • 桃裕行 校訂『北條重時の家訓』養徳社、1947年10月
  • 『増補改訂 武家家訓・遺訓集成』ぺりかん社、2003年8月
 

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