「鎌倉殿の13人」恐れる義時、受け入れる義盛。埋まりかけた両者の溝は…第40回放送「罠と罠」振り返り:4ページ目
エピローグ
「……考えてみれば、皆死んじまったな。昔からいるのは、俺と平六ぐらいだ」
しんみりと話す女装義盛。御所に潜入するためとは言え、ヒゲをリボン(桃色の紐)で結んだのは誰のセンスなのでしょうか(巴御前は、止めなかったのでしょうか)。
「今の鎌倉殿は賢いし、度胸もあるし、何よりここが温かい……ようやく俺たちは望みの鎌倉殿を手に入れたのかもしれねぇぞ」
まさに理想的な棟梁を戴き、坂東武者が力を合わせて幸せに暮らす。たぶん、亡き兄・北条宗時(演:片岡愛之助)が願ったのはこんな世の中だったはずです。
しかし、義時の解釈した「坂東武者のてっぺん」はあくまでも北条を頂点とする社会。そのためには、どうしても和田を滅ぼさねばなりません。
「最も頼りになる者が、最も恐ろしい」かつて上総介広常(演:佐藤浩市)を暗殺した時の情景が、小四郎の脳裏をかすめたことでしょう。
とは言え、やはり憎めない古なじみを殺したくない本心を、北条時房(演:瀬戸康史)は見抜いていました。
「本当は、和田殿が好きなくせに」「おい」
「あの方を嫌いな人なんていませんよ」
兄上だって、本当はそうなのでしょう?姉の政子でさえ読み切れない機微に寄り添う弟の姿は、義時にとって泰時とは別の救いなのだと思います。
第41回放送「義盛、お前に罪はない」
しかし義盛の帰りが遅いことで「もしや捕らわれた(討たれた)のでは?」と息子たちが誤解し、兵を挙げてしまいました。
見えかけた希望を容赦なく打ち砕く展開は、これまでも見て来たとおり、読めていてもなかなか視聴者の心をえぐってくれますね。
次週の第41回放送は「義盛、お前に罪はない」……既に罪なくして討たれることを予告するかのようなサブタイトル。
いよいよ始まる和田合戦。『吾妻鏡』でも屈指の迫力をもって伝えるこのエピソードは、ほとんど朝比奈義秀の独壇場。その暴れぶりがどのように描かれるのか、和田贔屓の一人として楽しみにしています。
予告編で実衣(演:宮澤エマ)が「今度こそ、死ぬ!」と明るく開き直っていたよう、おごり高ぶる北条一族に、目にモノ見せてくれるはず。
……ですが、同時に和田一族の最期でもあり、やはり辛い場面に変わりはありません。今から大いなるロスに備えておきましょう。
※参考文献:
- 石井進『日本の歴史(7) 鎌倉幕府』中央公論社、2004年11月
- 五味文彦ら編『現代語訳 吾妻鏡 7頼家と実朝』吉川弘文館、2009年11月
- 笹間良彦『鎌倉合戦物語』雄山閣出版、2001年2月
- 細川重男『頼朝の武士団 鎌倉殿・御家人たちと本拠地「鎌倉」』朝日新書、2021年11月
- 三谷幸喜『NHK大河ドラマ・ガイド 鎌倉殿の13人 完結編』NHK出版・2022年10月