比企能員、暗殺計画!北条時政の命により仁田忠常と天野遠景は…前編【鎌倉殿の13人】:2ページ目
「おい、これから比企を殺るぞ。お前ェらめいめい兵を集めろ」
すると遠景は笑って答えます。
「よしてくれよ旦那。あんな老いぼれ爺ぃ一匹殺るのに、軍勢なんざ要るモンか。何か適当な理由で館に呼べよ。俺らでサクッと殺ちっまわぁ。なぁ四郎」
「あぁ、その通りさ。任せとけ」
「……そうかい」
遠景と忠常の言葉を聞いて時政は、広元と再度打ち合わせ(事後の根回し?)をしてから、工藤五郎(くどう ごろう)に命じて能員の館に派遣しました。
「鎌倉殿の病が平癒するよう薬師如来様の仏像を作らせていたのですが、とうとう完成したので開眼供養を致します。尼御台もご参列あそばされるので、どうか比企殿にもおいで頂けましたら幸いです」
とか何とか。比企一族の者たちは、そろって能員の参列に反対します。
「こんなの罠に決まっています。どうしても行かれるのであれば、軍勢を率いて供させるべきです」
しかし能員は笑って諫言を退けました。
「馬鹿を申せ。せっかくの仏縁を結ぶ機会にそのようなことをすれば、却って我らが謀叛を疑われてしまう。さらには臆病者と笑われるばかりで、今後の不利となる。ここはあえて非武装かつ少人数で参列し、我らの度量を見せつけてやるが肝要」
果たして能員は平烏帽子に白の水干・葛袴といったいでたちで北条の館を訪ねていきます。
その一方で時政は甲冑に身を固め、能員を案内する通用門の傍らに遠景と忠常を待機させました。
また郎党の中野四郎(なかの しろう)と市河別当五郎行重(いちかわのべっとう ごろうゆきしげ)に弓を構えて待機させ、二人が仕損じた時に能員を狙撃させる手筈を整えます。
「此度はありがたき結縁に罷り越してごz……うわっ!」
能員が通用門をくぐった次の瞬間、両脇から飛び出した遠景と忠常が取り押さえてその首を掻き切りました。
こうして十三人の合議制を成していた武蔵の大豪族・比企能員は非業の最期を遂げたということです。
※参考文献:
- 石井進『日本の歴史7 鎌倉幕府』中公文庫、2004年11月
- 木村茂光『初期鎌倉政権の政治史』同成社、2011年10月
- 坂井孝一『曽我物語の史的研究』吉川弘文館、2014年11月
- 『NHK大河ドラマ・ガイド 鎌倉殿の13人 前編』NHK出版、2022年1月
- 『NHK2022年大河ドラマ 鎌倉殿の13人 完全読本』産経新聞出版、2022年1月