洒脱でラップ調な狂歌で藩政を批判…江戸時代の高僧・仙厓義梵が詠んだ心意気:2ページ目
よかろうと 思う家老は 悪かろう…大垣藩政を批判する狂歌
そんなことで居づらくなってしまったのか、清泰寺を出た仙厓が大垣に滞在していた時のこと。現地を治めていた大垣藩では、新任の家老が失態を犯したため財政難に陥っていました。
「まったく今度のご家老様ときたら……」
聞けば藩主様のお気に入りで、それがために抜擢されたというのです。今までの家老はかわいそうに、何の落ち度もないのに更迭されてしまったとか。
元の家老に戻してほしいと誰もが思っていましたが、それで聞いてくれるなら、そもそもこんな人事はあり得ません。
せめて一矢、もとい一筆報いてやろうと、仙厓は達筆を奮って狂歌を一首詠みました。
よかろうと 思う家老は 悪かろう
もとの家老が やはりよかろう【意訳】お殿様のひいき目でよ「かろう」と思っている「家老」は、民の目から見て悪「かろう」と思う。元の「家老」が、やっぱりよ「かろう」と思うので、出来れば戻して欲しい。
五・七・五・七・七の全パートに「かろう」を盛り込み、5回も「かろう」を繰り返す軽妙洒脱なラップ調。ちょっと口に出してみたくなりますね。
民衆からは大いに共感を集めたでしょうが、藩主様としてみれば自分の不明を批判されており、当然面白くありません。
「あの坊主、どうしてくれようか!」
かわいそうに仙厓は、美濃国から追放されてしまったのでした。