トンデモか否か!?意外と根強く残っている「武将・上杉謙信は女性」説を整理してみる【前編】:3ページ目
②「毎月の腹痛」
八切氏によると、謙信は毎月10日頃に腹痛を起こしていたといいます。この腹痛はかなり激しいもので、戦の途中でもこの腹痛が起きると、謙信は陣を引き払って部屋に引き籠っていたそうです。
これを聞いて、女性の生理痛を連想する人も多いでしょう。ではこの「腹痛」の存在を示す史料にはどう書いてあるのかというと、徳川家康の外孫・松平忠明が記したとされる『当代記』です。これに、謙信の死因は「大虫」であると書かれているのです。
八切氏によると、「大虫」は実は「月経」の隠語だそうです。よって謙信は婦人病や月経に関する病気で亡くなったのではないか、というのです。
しかし、そもそも「大虫=月経」というのは誤りで、近い言葉で「おむし」という月経の隠語があるのでそれと間違えた可能性があるようです。「おむし」の語源は「蒸す」で、大虫とは関係ありません。
では大虫というのは何かというと、これは腹痛全般のことを指します。
実際、当時の史料で上杉謙信が「虫気」が原因で亡くなったと記しているものがあり、謙信が腹痛で亡くなったのは間違いないようです(脳卒中説は俗説で誤りの可能性が高い)。ただ、それが婦人病や月経に関するものだとする証拠は存在しません。
ちなみに付記しておくと、現代医療の観点からも、更年期障害の悪化が直接的な死因になることはないとされています。
【後編】では、有名な「生涯不犯」を根拠とする論説などを詳細に説明します。