五十音はなぜ「あいうえお」の順なのか?実は漢字と梵字が深く関わっていた:2ページ目
50音表の生みの親、明覚上人
石川県加賀市に薬王院温泉寺という寺があります。
平安時代後期、ここに移り住んだ明覚上人という学僧が、「五十音図」の原型を作った人物の一人と言われています。
1093年に明覚上人が著した『反音作法(はんおんさほう)』が現在の原型になっているといわれています。
明覚上人は比叡山延暦寺に入り、悉曇学(しったんがく)を学びます。悉曇学とは、平たく言えば、中国や日本においての梵字(サンスクリット語)に対する音韻の学問。
当時の僧侶は仏教の経典を読むため、梵字と、経典が書かれている漢字を習得する必要がありました。
漢字はそのまま目視しても発音できません。どう発音するのかを示すため、中国では「反切(はんせつ)」という方法を使っていました。反切とは、2つの漢字を組み合わせて1つの漢字の発音を表現するものです。
例えば、 「唐」の場合ですが、「徒」d-と「郎」lɑŋでdɑŋというように、1文字目の子音と2文字目の母音を組み合わせて表現するとのこと。
これを日本語の仮名にも応用して、例えば「カ(ka)」行の「ウ(u)」段は「ク(ku)」というように分類した、というわけです。
並びの謎は?
では、どうして子音は「あかさたな…」、母音は「あいうえお」の順番に並べられているのでしょうか?
これは前述した梵字に由来しているとされています。サンスクリット語とは古代インドで使われていた言葉ですね。
ざっくり説明しますと、そのサンスクリット語の子音と母音の順に、日本語をあてはめたというわけ。
漢字や梵字には日本語には存在しない発声音がありますので、50音表ですべて表現できるわけではありません。また、明覚上人以前には別の並びでまとめられた表もあります。
異なる言語を読むためにどう発音を表記するのか。それまでも日本語が存在していたわけですから、当てはめていくことそのものが奇跡のように感じますね。
参考:コトバンク, ことば研究館